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  2


あああ、なんでこんなことになったの。
とっっても、面倒くさい。

目の前で繰り広げられる七武海と大将の争いを見守ることしかできない私。いやだって、ここに手を出したら私自身がどうなることか…。お願いだからセンゴクさん帰ってきて、なんて願いを込めながら状況を見つめていると、さらりとした感触。
それを感じた刹那、私の体が砂に覆われた。

「…無意味な争いだ」
「く、クロコダイル」
「声を出すな…。このまま来い」

低く腰に響く声でそう囁くと、バサリと葉巻と香水の匂いが染みついたコートに包まれる。クロコダイルの香水は嫌いじゃないけど、葉巻がいやだなぁ。そんなことを思いながらも、今はそれに従おうとそのコートに身を潜める。クロコダイルは満足そうにニヤリと口角を上げた。


「テメェ!ワニ野郎!」


一番に気づいたのはドフラミンゴで。
その声に体をびくりと跳ねさせると、クロコダイルは高笑いを一つしてから、「そのままやってろ馬鹿ども」と捨て台詞を残してブワっと風を起こした。その砂嵐に驚いて目をぎゅっと閉じると、そのまま体が持ち上げられ、運ばれていくのが自分でもわかった。

風が収まってすとんと足が地面についたことを感じて目を恐る恐る開けると、見覚えがある部屋にいる。私の執務室だ。一息をつく間もなく、サアアと風の音を立てながらクロコダイルの姿が目の前に現れた。

「……ありがと」
「クハハ…心がこもってねェな」

ふう、と煙が吐かれ、葉巻の煙が部屋に広がっていく。ああもう!煙草臭くなってしまうじゃない!そう窓を開けようと踵を返すが、腕を掴まれ制止された。

「な、なに」
「助けてやったんだ、礼の一つぐらい寄越さねェか」

「礼って…っわ」

そのまま体が引き寄せられ、抱き上げられる。片手で。私の倍近くある身長のクロコダイル。本当は顔だってちゃんと見上げないと見えないくらい。そんな彼の顔が今は目の前にあって、思わず心臓が跳ねた。思ったより重い、なんて余計なことを言われたので武装色で叩いてやろうかと思ったけど、なんか倍返しされそうでやめた。

「決まっているだろう」

そう艶っぽい声で囁かれて、体がビクリと跳ねた。海賊の癖に相変わらず素敵な声だ、なんて思っていると、ソファにふわりと下ろされた。私を押し倒す姿勢になっているクロコダイルを見上げると、心底楽しそうな笑みを浮かべている。私が、クロコダイルにできるお礼…なんて。
すっと顔に手を伸ばし、頬に触れる。
クロコダイルはそれに目を細めてから、葉巻を口から離した。そして微笑みながら、顔を近づけてくる。

私はそのすきに手に握られていた葉巻を奪い取ると、代わりの物を口に差し込んでやった。


「ッ…!?」


机上にある灰皿に腕を伸ばして葉巻をじゅう、と押し当てて火を消してやる。だって、危ないじゃない。何を、と動揺しているクロコダイルはなんだかすごく珍しい。

「それ、お礼。結構おいしいから」

クロコダイルの口元には、葉巻デザインのお菓子。甘すぎないし、「なんか大人の味」って感じのもの。唖然とした顔で私を見下ろすクロコダイルが少し可愛く思えて、思わず笑ってしまった。そんな私に舌打ちを落としてから、覆いかぶさっていた体を起こしてソファに深く腰掛ける。私も体を起こして隣に座りなおすと、鋭い目が私を捉えた。その瞳には私がしっかりとうつし出されている。あまりに見つめられてたじろぐ私をみて、クロコダイルは何故か笑い出した。


「クハハハ…!この状況で菓子を寄越すか普通…」


頭を抱えて笑いをこらえながら「相変わらず色気がねェ」とつぶやくクロコダイル。その言葉にむっとしながらも、たくさんの指輪が光る指に先ほどの葉巻のお菓子が挟まれていているのを見て、食べてみて、と声をかける。
クロコダイルは横目に私を見てから一口かじった。

「…悪くねェ」
「!でしょ!!」

甘いとか、まずいとか、そんな言葉が帰って来るんじゃないかとハラハラしてしまったけれど、想像以上の感想とその表情にうれしくなって声を荒げてしまった。そんな私を見て、一瞬目を見開いてから微笑んだクロコダイルがなんだかすごく色っぽく思えてしまって、思わず息を呑んだ。








惚れ薬










これだからお前のことが止められねェ


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