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「あだっ……!」
「……」

ずでんと大きな音を立てて転んだ大男に、何故か私はほっとしていた。相変わらずなその姿に「久しぶりです」と声をかけると、少し照れがちな笑顔で「久しぶり」と見上げられた。

「ローから連絡を受けてな。急いできた」
「ありがとうございます」
「いや、………生きててよかった。」

ポンと頭を撫でられて大きな手に安心感を覚えた。「さて」と真剣な眼差しに変わり、彼…ロシナンテさんは、ドフラミンゴの話しを始めた。

「すぐだな、おそらく。ドレスローザからの位置を考えると…明日…いや、今日の可能性もある。」
「イトイトで飛んでこれちゃいますもんね」
「…ま、俺に出来るのは音を消すことだけだが…とりあえずニナ、一度この島を離れる。」

えっと声にならない声が挙がりかけたけれど、ロシナンテさんが"大丈夫"と言いたげな目線で私を優しく見下ろしているものだから、押し黙った。きっと、ローとも協力の上だろうから…そう思い、差し出された大きな手を取る。
ふ、と口角を上げたロシナンテさんだったけれど、一体どうするつもりなのか全く想像もつかない。手を引かれながら考えていると、島のみんながロシナンテさんに「ニナちゃんをどうするつもり」と心配してくれている。ロシナンテさんは一度立ち止まったかと思うと

「あァ、大丈夫。一度保護するだけだ。」
「……そうかい」
「ちゃんと帰すさ、ここに」

そうにっと笑うものだから、みんなもどうやらほっとしてくれたみたい。「ニナはみんなに好かれてんだなァ」なんていいながら煙草に火を付けようとして服に引火するロシナンテさんを見て、その場はより明るくなった。

…いざ海軍の船の目の前に来たかと思うと、恐怖が押し寄せた。ロシナンテさんを疑っているわけではないけれど、もし、この動きすらドフラミンゴが掴んでしまったら……

「…震えてる」
「えっ…あ…」
「まァ…心配だよな。………でも大丈夫だ」
「……どうして?」

ふう、と長く煙草の煙を吐ききったあとパチンと指を鳴らした。周りの海兵の声、波の音、…全てがまるで消えたかのように音を無くす。キョロ、と周囲を見回してからロシナンテさんを改めて見上げると、ニヤリと珍しく少し悪そうな顔で言った。

「強力な助っ人が居るからな」







連れ去ると決めていた。
俺の何より手に入れたいもの、それは1つ。
雲に糸を伸ばして、空を飛ぶ。船に乗ってゆらゆら島に向かうほど、ゆったりした気持ちでは居られない俺は、目的の島にあと数刻というところまで迫っていた。

アイツが死ぬはずはない、そう確信していた。だからこそ俺は情報を徹底的に調べあげた。
ようやく、見つけた。
ここまで時間がかかると、俺自身も想像していなかった。何故こんなにも情報が掴めなかったのか………と、思うと、チラと赤い髪の男が脳裏を過ぎり、無意識に額に血管が浮き出る。
ああ、ニナ
俺にらこれほど愛されたこと、後悔するといい




───もぬけの殻
ドアには"close"の文字
思わず舌打ちが出て「おい」と近くの通行人を捕まえる。

「ニナという女が居たはずだ」
「っニナちゃんなら、一昨日海軍に連れていかれたからっ…」
「…………なんだと」

ソイツがぺらぺらと必死にしゃべる内容でいうと、あまりに名のある海賊たちがここに入り浸るから保護された、という。怒りが頂点に達しそうだ。海軍の連中に俺が動いたということを勘づかれたのだと察した。そんな事をしたところで、俺から逃れられるわけはないというのに。
俺は怒りに任せ、目の前の町人にイトを伸ばし、首にそれをかけて釣り上げようと、

「何もするな、ドフラミンゴ」

した、ときだった。ガチャリとリボルバーの鳴る音と向けられた銃口に目をやる。その持ち主が鋭い眼光が俺を睨みつけている。あァ、そうか。そもそもこの島にニナを匿ったのは海賊団いや、この男の"船長"だった。この島を領地の1つとしている、あの男。

「……フ…フッフッフ…!次は何処に隠した?」
「お前には、今後も関係のねェことだろう」
「フフフフ…嘗めるなよ」
「嘗めてはいねェさ。…ただ、これからも彼女を追い続けるというなら…」

俺たちが相手になると思っておいた方がいい

ギロリと目線が鋭くなると同時に、俺は喉が鳴った。くだらねェ。誰が相手だろうと、俺は必ずニナを手に入れることに違いはないというのに。

「今日は、手を引いてやるさ」
「………」
「そう言うのなら、せいぜい見張っておくことだ」

俺の手元にニナが来るのは、遅かれ早かれ決まっている。そう目線でベン・ベックマン…いや、その背後にいる赤髪の男に向けて睨みを効かせた。








降りしきる、積もり出す









お前への執着

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