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  芽吹いた恋は



窓の外を見つめて、「いいなあ」と声に出そうになった本音を飲み込む。目線の先には憧れの人と、その隣を歩くことを許されているたしぎさんの姿。私の上司であるヒナさんは、たしかに大好き。とってもかっこよくて素敵な上司だけど、彼は…それとは違う。上司としての憧れだけではなくて…。

「熱烈な視線ね」
「っ、ヒナさん…」

ちょうど想像していた直属の上司の声にはっとして敬礼をすると、ふふ、と笑われた。どうかしましたかと問う前に、ヒナさんはその窓を開け放った。

「スモーカーくん!」
「…ヒナか。」

私が見つめていた張本人が、ヒナさんの呼び掛けに応えてこちらへ向かってくる。壁に沿って彼から隠れるようにしていた私を、ヒナさんがぐいっとひっぱって肩を組まれた。離して欲しい目線を送ると、ニヤニヤと口角を上げたヒナさんのいい顔。(た、楽しそう……)

「今日は何処へ?」
「麦わらの情報を掴んだ」
「また彼?熱心ね…」

誰かさんと同じで、とヒナさんが私に視線を送ったのを追いかけるようにスモーカーさんと目が合う。ぶわっと顔が熱くなった。「そうなのか?」という問いかけに言葉が出てこない。

「そうよ。捕まえたくて仕方ないのよね、ニナ」

(ヒナさんもう勘弁して〜…)
そんな私の思いが届く訳もなく。ばっと目を逸らしたものの、スモーカーさんの視線を強烈に感じた。必死に気づいていることを隠すように目線を動かし続けるけれど、これじゃ逆に怪しいじゃないかということを思う。ふふっとヒナさんが頭上で笑ったのに肩を跳ねさせてヒナさんの腕から逃げ出した。

「あら。ヒナ、失態」
「し、失礼しますっ……!」



………と、走って来た。のに。

「────詳しく聞かせろ」
「は、…ぃ…?」

結局、何故かスモーカーさんに追いやられている。
2人から逃げ出して、廊下で足を遅めながら一息ついていたところ、背後からぶわっと白い煙に包まれた。何のとか、誰のなんて、私にとっては愚問で。スモーカーさんが吸っている葉巻の匂いが、いつもの倍以上感じられるくらいの距離に、心臓がバクバクと高鳴る。これ以上は、破裂してしまう。それくらいの音が、体を通して自分の耳に届いていた。

「どこの海賊のことだ。」
「えっと、いや、その」
「同期の部下の誼だ…協力できることはするが」

……貴方にだけは、協力してもらえないのです。
そんなことをぺらりと言える私ではない。とりあえず、少し離れて下さいとだけ伝えると、本当に少しだけ、距離が離れる。(いや本当は、もう少し…いや、もういいや)

「わ、私の事はいいじゃないですか」
「あァ?」

思いを伝えることなんて、今の私には出来ないから。ただ、少しでも心の距離を縮めたいから。

「スモーカーさんの、ことを、知りたいです」

おずおずと、背の高い彼を見上げる。ぐぐ、と眉間に皺が寄ってひい、と心の中で悲鳴を上げるけれど、今日は、引き下がらないと決めた。今日は、名前だけでも覚えて貰うんだ。そう緊張で震える手をぎゅうと握る。手汗が凄い。

「俺は、お前の話を聞きに来たんだ」
「いいんですっ…スモーカーさんが今まで麦わらたちとどんな事があったかとか…他の海賊の事でもいいです!スモーカーさんのことを…っ」
「ニナ」

強い声にビクリと方が跳ねた。落ち着けと、一言付け加えられた数秒後、私はばっとスモーカーさんを見上げる。びっくりしたスモーカーさんが目の前にいるけれど、私の方がびっくりだ。

「…今、今、なんと言いましたか。」
「あァ?…落ち着けと、」
「そ、その前ですっ」
「… ニナ、」
「私の、名前……」

知っていたんですか
小さく呟くと、スモーカーさんはぐっと口をへの字にして微かに頬を赤らめた(気がする)。そんな顔されたら、びっくりしただけだった私も、急に嬉しさと、恥ずかしさが湧き上がってきて、顔が熱くなっていった。チッと羞恥心を隠すように舌打ちをして、大きな掌で口を隠しながらスモーカーさんは私を改めて見下ろした。

「知らねェわけ、ねェだろ」






「………ほんと、鈍感な人たち」

窓の下で何だか頬を染め合う2人を見下ろして、思わず口角が上がってしまう。部下であるニナが、スモーカーくんに好意を寄せていることは知っていた。相談も受けていたから。けれど、ニナから相談を受けるより、ずっとずっと前に、彼女の名前を聞き出されていたのよね。誰って?そんな野暮なこと……ふふ。下にいる、羞恥心か何かで煙になりかけの男に、ね。

それにしても、さっきのやり取りも面白かった。ニナに「捕まえたくて仕方ない人がいる」そう、スモーカーくんに話してみたときのこと。わざと海賊、とは言わなかったのが、スモーカーくんにはちゃんと引っかかってくれたみたいで。あの時の彼の顔ったら、…思い出すだけで、楽しくなる。
嫉妬。ただその思いが溢れ出た表情。
ニナは誤魔化そうとしているのか、そっぽを向いていたから気づくわけもなかったけれど…(そんな2人の様子に笑ってしまったら、ニナに逃げられてしまったってわけ)。そしたらスモーカーくんたら、追いかけていくんだもの。

「ヒナ、天才」

キューピッドになれちゃうかも。










芽吹いた恋は










いつか花を咲かせるの




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キリ番リクエスト
スモーカー夢でした。
リクエストありがとうございました!
書いているものたちを素敵と言っていただいて、本当にありがとうございます涙
執筆意欲に凄く凄く繋がります…感謝です…
スモやん好きなんですけど、キャラが両極端になりがちで、難しいです。例えば、めちゃくちゃドSなスモやん。大好きです。ヘタレで奥手なスモやん。これも大好きです。笑
今回はヘタレスモやんになってしまいました笑
リクエストありがとうございました!
ぜひまた読みに来てください!

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