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  Silent



とある島のとある町。ローとの旅はもう3ヶ月目というところ。隣の町の病院を吹き飛ばしたのはつい先月のことだ。この町には病院がないけど、ローの調子がいいとは言えないので、一度ゆっくりしようとこの町に滞在して早1ヶ月。初めは熱が出ても、2.3日で下がっていたのに、最近はそれが延びてきている。…日に日にローの体調が悪くなっているのは、大人の俺にはよく分かっていて。正しい知識もねェくせ、"医者"と名乗るバカヤロウ共を全員ぶっ飛ばしてやりてェところだ。

「あ、"ピエロさん"」
「…」

『よォ』と挨拶を書いた紙をピラリと見せると、ニコリと笑って俺を見上げるのは、この町に滞在している間に親しくなった女、の子。歳は知らねェ。ただきっとローよりちょっと年上くらいの少女。綺麗な格好をしているとはいえねェけれど、顔は整っていると思う。

「今日は男の子、一緒じゃないのね」
『部屋で寝てる』
「そう…元気になるといいけれど」

この子を避けない理由は一つ…ローを差別しないということ。ローの病気の事を知らねェのか、それとも知っていても気にかけてくれているのか、それは分からねェが、この町に付いて疲れでぐったりしているローを見て、宿屋に声をかけに走ってくれた。そんな彼女を避ける理由は、ない。
彼女はニナというらしい。俺たちは名前を教えねェくせ、名前を教えてくれた。この町の酒屋を手伝っているようだが、待遇は、良くない。たまに髪を掻き分けると、腕に青い痣が見えるのだ。

「またお店に顔出てね、」

そんな事を気にさせない笑顔で手をふって去っていく彼女の背中。…全く、それでなくてもローの世話もあるんだぞ。世話焼きな性格が、こういう子達を引き寄せてしまうようだ。

「…コラさん」
「ロー!起きたか!」

部屋に戻ると、掠れた声が俺の耳に届いてベッドに駆け寄る。真っ白な肌に汗が滲み出ていて、どうも辛そうだ。「明日には」と、俺たちの旅路を気にする素振りを見せるもんだから気にすんな、と笑ってやる。息を切らしながら細まった目で俺を見上げるロー。チラ、と窓なら空を見上げて「アイツ」と呟いた。俺が聞き返す前に、ローは細い声で話始めた。

「…アイツ、おれと…同じだよ、コラさん。どうやったって、死ぬしかなくて…生きたくても、おれたちに……自由は、ねェんだ…」

だんだんと小さくなっていた声がふと消えていった。すうすうと寝息をたてているローを見つめる。ローの言う"アイツ"は、おそらくニナのことだ。ローも、彼女の事を気にかけているようだ。(まずは自分をもっと大切にしてほしいもんだが)
ローがしっかり寝たことだ、俺も一休みしよう。
そう、思ったのに。何でかあの子のことがやけに気になって、俺はまた部屋を静かに出たのだった。




「──────」

ああ、全身が痛い。
壁に打ち付けられ、お構い無しに蹴られたところがジンジンと悲鳴を上げている。何だかやけに、ボーっとするな。"おとうさん"の声もあんまり聞こえないや。凄く怒っている顔をしていて、ずーっと怒鳴っているはずなのに。
このお家に売られてもう2年くらい。最初は優しかった"おとうさん"は、日に日におかしくなっていった。お酒やギャンブルに溺れて、お店に手をかけないようになって。代わりに私が頑張ってお店を切り盛りしても、それがやけに気に入らないのかたくさん殴ったり蹴られたりして。逃げることなんてできる強さはない。
私は、ここで

「……なァ」

"おとうさん"の声はちゃんと聞こえないのに、しぃんとしたお店に低い声が響いて、ちゃんと私の耳に届いていた。必死に目を動かして、声の主を見つけた途端、涙が溢れ出た。

「…………ピエロ、さ」

私がそう呼ぶ間もなく、目の前の"おとうさん"が吹き飛んで壁にめり込んだ。ピエロさんの、長い足が地面にヒールの音を鳴らして、ああ、ピエロさんが蹴り飛ばしたんだとようやく理解する。

「……大丈夫か」
「……ふふ」
「何、笑ってる」

私の前にしゃがみこんで眉を潜める彼。

「………優しい、声ね」

私の言葉に、ピエロさんは大きく目を見開いてから私の頭をする、とやんわり撫でた。






「ニナ、薪とって」
「はぁい」

そんなこんながあって、俺の下にもう1人…子どもが増えた。目の前でパチパチと焚き火をたく2人の"お荷物"を見つめながら、ため息をついた。

「いや、お荷物はコラさんだろ。ドジだし」
「ローの言う通り」

口の減らねェ餓鬼共。

ニナを助け出す一件で、家を一つ爆弾で吹き飛ばしてやったもんだからあの町にも居られなくなり、急いでローと3人で町を出た。今はもう他の島に上陸している。ローは何も言わねェけど、何だかんだニナともうまくやっている。 俺は、もう喋れねェ演技も無駄になっちまったから、普通に話をしている。

「そういえば、ニナっていくつだ」
「えーっと……22かな?」
「ぶっ」

ローのふとした質問に、飲み物が吹き出してしまって2人に汚いと怒られた。(…俺の扱い…)ローと変わらなだろうと思っていた彼女が、まさか自分の方が歳が近いということに衝撃が走った。しかし、子ども、じゃねぇのか。
そう、思わずニナをじ、と見つめる。
そうか、単純に食うもの食ってきてねェから育ちが悪いだけなんだな、なんて解析をしていると、ローがジト、と俺を睨んだ。

「コラさん。ニナを変な目で見んな」
「っな!見てねェ!!」

そんなローとのやり取りをクスクスと笑うニナ。そんな彼女に惹かれていくのは簡単なことだったんだが……それは、また別の話。








Silent









秘密の話




──────────────
よしのさんよりキリ番リクエスト
コラソン夢でした。
久々に書いたということもあって楽しく書きました。凄く楽しかったので、もしかしたらリクエストとかじゃなくて中編連載しちゃうかも…なんて。
コラさんは、コラさんである限り基本的に喋らなかったり、ナギナギの実を食べていたりするからこそ声、というものをプッシュしたくなります。いい声ですしね笑
リクエストありがとうございました!

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