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なんだこれなんだこれなんだこれ!?
なんでエースくんが私の家にいるんだ……

「このソファ座り心地いーな」
「そ、そうかな。よかった」

エースくんは…普通、だ。そりゃそうだよね、ただ友だちの部屋に遊びに来てるだけだもんね。そう思ったら何となく気持ちが落ち着いてきた。エースくんとは友だちになれたんだし、いいよね、そうだよね。なんだか今度はワクワクし始めた。そんなことを考えながら麦茶を2人分注いでいると、"ぐぎゅるる"と大きな音が聞こえてびくりと肩を震わせる。その音がした方を振り向くと、お腹を焦ったように押さえるエースくんがいて、「…悪い」と頬を赤らめて言った。

「晩御飯、食べてないんですか?」
「…仕事終わりに真っ直ぐだったから」
「…カレーとかでもいい?」
「!!おうっ」

ぱあっと明るく笑ったエースくんの顔を見て胸を撫で下ろす。だって、さっきは…

『アンタのこと、もっと知りたい』

数刻前のエースくんの言葉がフラッシュバックして、少し顔が熱くなる。あの言葉に、真剣な眼差しに、少し悲しそうな表情に、つられて思わずお家に連れてきてしまったけれど…。いざ家に着いたら着いたで、部屋のソファに腰掛けるエースくんの姿を見て、冷静になり始めた。そして大混乱し始めたのだ。だから、ちょっといつものエースくんの顔が見れてほっとしたというのが正直な気持ち。
エースくんにめちゃくちゃ踊らされている感じがするけれど…それでも、悪い人じゃないのが分かっている私としては、まあいいのだろう、なんて思ってしまうのだから。

「あーーっ!」

鍋を揺らしていると、急に大声が聞こえてきて「えっ!?」と私まで大声で驚いてしまった。何かあったの、と急いでエースくんのところに行くと、リモコンを持ちながら嬉々とした表情のエースくんがいて、あれ?と思う。

「ニナ!録画して見てくれたのか!」

いつの間にか私のHDの録画を確認したらしく、そこにはこの前見ていたエースくんたちがゲストだった"vsスピリット"が…。そういえば、録画したんだっけ。リアルタイムで見てはいたけれど…

「面白かったですよ」
「そ、そうか!」
「ルフィくんが」
「俺は!?」

何でそんなに必死なの、と思わず吹き出してしまった。そんな私を見てエースくんは我に帰ったように頭を掻く。「エースくんはかっこよかったです」と褒めてみたら、少し顔を赤くして、でも「当然」なんて素直じゃない返事が返ってきた。
録画を再生してからカレーをとりにキッチンに戻る。エースくんに差し出すと、うめー!といいながらぺろりと平らげてしまって、それもまたおかしかった。(この番組でも食べ物の話沢山してたもんなあ)
エースくんと2人でテレビを見ながら笑いながら過ごしている時間は、心地よかった。前よりずっと距離が近くなった感じ。"友だち"って言ってもらえたし。でも、今テレビに映っている人が隣にいるって…恐ろしくてすごい話だ、と実感もしていた。

と、その時。
私のスマホがピロンと音を鳴らした。それはLINEの通知で、チラ、と画面を見るとローさんからだ。

『電話いいか』

!!?
チラッと見るで済まされない文章にドキリとする。私の様子が明確に変わったことに気づいたエースくんが、どうした、と聞いてきて友だちからの連絡だと言葉を濁す。とりあえず、今はエースくんと居るしローさんには後でとご連絡を…と、文字を打とうとした時、今度は着信音が鳴り響き始めた。勿論その相手はローさんで、待てなかったとでも言いたげだ。あわあわと慌てる私だったが、すっとスマホが手からなくなる。画面に表情された人物の名前をみたエースくんが、私のスマホを奪い取ったのだ。

「え、エースくん?」
「……」

か、顔が、怖い。さっきまで笑い合っていたのが嘘かのように、スマホの画面を見つめている。…だけなら、よっぽどよかったのに。

「もしもし」
『…………あ?』

エースくんがその着信を取ってしまった。
私の声がするはずのスマホから、エースくんの声(と気づいているかは分からないけど)がして、おかしいと思わないはずはなくて。スピーカーにされたスマホから、あからさまに不機嫌なローさんの声が聞こえる。ピリピリとした空気が私に声を発させなくて、私はこの状況に戸惑うことしか出来なかった。








一触即発







まさに、このこと

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