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「#エロ」のBL小説を読む
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『本屋さんに今日も寄ります』


『トラ男の何かかよ』

『写真集です!』
『注文できたので!』


『ふうん』
『どこの本屋だ』

『この前の本屋さんですよ』


『どこだ、それ』

『え』
『〇〇書店です。忘れちゃいました?』


『了解』


こんなやり取りは確かにした。ちょっと違和感を覚えつつ。エースくんと出会った場所で、この前も送って貰ったうちの近くの本屋さん。「どこ」と言われて、あれ?ってなったし、いつもなら「了解」はスタンプが多いイメージだったから…調子でも悪いのかな、となんとなく心配してたんだ。
けど、けど、まさか

「あれ送ったの俺だからな」
「そ、そうでしたか」

エースくんのスマホを勝手に使って、ローさんが一部打ったなんて、想像もしないよ。(だから今この場にエースくんがいないのだろうけど)いやそれにしても、ローさん本物すご、いかっこいい。テレビでみたよりずっとかっこいい。
とにかく、本屋さんの前にいては目立ちすぎるからと、少し端っこに寄る。大通りからは裏道にあるからか、あまり人も多くなくて、ちょっと移動しただけでも安心感があるのが救いだ。

「あ、あ、の。本日の、ご要件は…」
「別に用事はねェ!エースと遊んでるっていうお前に会ってみたかっただけ!あ、おれはルフィ!よろしくな!」
「押しかけて悪いな、サボだ」
「え、あ……よ、よろしくお願い、します」

「で、こっちがトラ男だ」と追加でルフィがローさんを紹介する。全員、知ってますよ。とりあえずだけど。(いや、ローさんは写真集たった今買いました。とりあえずじゃないです)現実を受け止めるしかない状況に、ぺこーっと頭を下げると、「おもしれーやつ!」とルフィくんが頭上で笑った。そうですか、と首を傾げると「おれとも友だちになろう!」って。

「い、いやいや…!私なんかが、恐れ多すぎます」
「えー!エースとは友だちなんだろ!」
「とっ…ただ私はお礼をさせて頂いただけで…」
「いや、多分エースはもう友だちだと思ってるぞ」

そうじゃなきゃ、連絡なんて頻繁にしない。
”友だち”なんて響きにビックリして首をぶんぶん横に振ったけれど、サボくんの一言にカチリと体が固まった。ともだ、ち…エースくんと私が?
そんなこと、ない。
たまたま助けてくれた方がエースくんだっただけで、テレビや雑誌で活躍している有名人のみなさんと友だち、なんて…分をわきまえないとは、まさにことのこと。

「……み、みなさんと私は、違う世界の人間なので、…」
「何が違う」

ボソボソと呟いていると、ローさんが私を少し厳しい目で見下ろしながらスパンと言い切った。それに思わずびくりと肩が跳ねた。

「トラ男」
「……悪い。怖がらせる気はなかった」
「目付き悪いからなートラ男」

けらけらと笑うルフィくんの言葉にぐ、と目元を抑えて謝ってくれるローさんに「こちらこそごめんなさい」と謝る。失礼だ、今のは。

「何も違わねェ、と言いたかった」
「…ぇ」
「お前も俺たちも、別に同じ人間だ。違う世界なんてことはねェ…現に今、ここで会ってる」

眉をひそめて、少し申し訳なさそうにしながらも静かにそう話すローさん。そのたどたどしくも紡がれる言葉に心臓をぎゅ、と掴まれたようだ。

「そう、ですね。すみません」
「じゃあ!友だちだな!エースとも、俺たちとも!」
「俺たち…!?お、おい麦わら屋!」
「っはい!ぜひ!」

わーいと、嬉しげにハグしてくれるルフィくん。いやいや、多分これファンの子に見つかったら私即消されるな、なんて冷や汗かきつつも、ローさんの言葉が嬉しくて心にストンと落ちて、いいかな、なんて思っていた。

「おいっ!!!」

そこに、響いたのは大きな怒鳴り声。ビックリしてその声の主を探すと、そこにはエースくんの姿。よくここが分かったなあ。

「お前ら!何してんだッ」
「おれもニナと友だちになりにきた!」
「成り行きで友だちになった」
「……右に同じだ」

ルフィくんたちが次々と答える内容に、エースくんはぶるぶると震えて拳を握りしめている。(これは、怒っているやつだ)「ェ、エースくん」と宥めに入ると、ギッと眉間にシワがよったエースくんの瞳が私に向けられる。と、すぐにその標的はローさんに変わって、「スマホ返せ!」とローさんの手から奪い取った。「そういえば」と、まさかのタイミングで話し出したサボくん。

「ニナ、何買ったんだ」
「……っへ」

そこに、今、触れますか!?と、焦ってぎゅうと紙袋を気抱きしめる。いや、中身はローさんの写真集ですよ。そうですよ?けど、それを本人目の前にいえわけが無いというか、なんと言うか。そんな羞恥心でぶわっと顔が熱くなる。目を泳がせるが、どう見ても挙動不審だ。

「…俺の写真集、」
「っ」
「だろ、ニナ」

ニイ、と悪い顔で笑うローさん。何で知っているの、と思ったらそういえばエースくんとのLINEを見られていたのでした!注文したとまで送っていました!「そそそう、ですけど」と下を向く。こんな恥ずかしいことはない。ルフィくんやサボくんが、「そういえばトラ男のファンだって言ってたな」とか、納得したようなことを言っているけど、エースくん、どこまでお2人に話をしたのか。すると、ザリと音を立ててローさんの靴が視界に入ってきた。えっと顔を上げると、びっくりするくらい近づかれていて、爆発しそうになった。

「本物と、どっちがいい?ニナ」
「〜〜〜ッ」

さっきまでのローさんはどこにいったのか。
セクシーすぎる。小さく首を傾げて目を細める仕草、……そんなのっ、ずるい!!

「だーーーっ!!セクハラやめろトラ男!」

そこにエースくんが割行ってくれて、私の心臓は爆発を逃れたけれど、バクバクとずっと心臓の音がうるさいままだ。
その後のことは心臓がうるさすぎてもういっぱいいっぱいだったので、半分くらい記憶が無いけれど、ようやく落ち着いたころにLINEの友だち画面を見たら、「ルフィ」「Sabo」「T.low」と、新たに3つ追加されていた名前をみて、私は布団に倒れ込んだ。







千錯万綜








流転の、日々

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