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「何だテメェ、トラファルガー!その姿!」
「…それいじょうくちをうごかしたらバラすぞ、ユースタスや」

ケタケタとローの姿を見て笑っているのは、ユースタス・キャプテン・キッド。ローやボニーちゃんと同じ最悪の世代の1人。
何故またこの人が、というのは数刻前に遡る。



うりうりとボニーちゃんに頭を撫で回され、つくづく、不機嫌なロー。何とも可愛くて、私がそれを止めないのも更に機嫌を損ねる要因にあるようだけれど。そこにバタバタとイッカクちゃんが飛び込んできた。

「キャプテン!反対側の港に船です!」
「しろひげかいぞくだんがいなくなったからな…どこのかいぞくだ」
「ユースタス・キャプテン・キッドです…!」

その名前に、ローの小さな額にぐぐぐと皺がよる。すごく嫌そうな顔だ。(ボニーちゃんのときとは更に違う嫌そうな顔)一方のボニーちゃんはというと、その情報にすら楽しそうに笑っている。私の焼いたピザを頬張りながら。

「おい、ボニーや、はやくもどせ」
「いやだね!アイツも来たなら尚更そのままにしといてやるよ!」
「てめえっ………」

ユースタス・キャプテン・キッド。彼もまた、手配書でしか見た事のない海賊だ。ローやルフィともライバル的な存在になるんだろうか。強さも新世界まで来ているくらいだから、相当なものなのが伺える。
ローとボニーちゃんのやり取りを他所に、手配書の束を取り出して写真を見る。ああ、こんな感じだった。なんだか怖そうな顔してる。(…いや、赤犬さんの方が怖いかもしれない)

「邪魔するぜ」

と、そこにやって来たのがまさにその張本人。





と、冒頭に戻るわけである。
そりゃ、ハートの海賊団も船が来たことを把握してるくらいだもの、敵船がいるとなれば情報もすぐ入るだろうから…ローも、ボニーちゃんも、ここに居ることを分かった上でここに来たであろう、この人。
ローの襟首をつまみ上げてその小ささにケラケラと笑っている。"何だ"とか何とか聞いていたけれど、ボニーちゃんが居るのを知っているんだから、何故ローがこうなってるかなんて想像しているだろうけれど。

「このまま握りつぶせるかもな」
「てめぇていどに、やられるおれじゃねェ」
「言うじゃねェか、餓鬼の体で」

ピキ、とキッドの眉間の皺が動いたのが見えて、私は彼の手にぶら下がっていたローを奪い返して抱きしめる。キッドは、まさか一般の女がこのやり取りを邪魔してくるとは思わなかっただろう、驚いて少し間抜けな表情を浮かべている。

「やめて」
「おい、ニナ。てぇだすな」
「馬鹿ロー。能力も無いのに煽らないで」
「………」

私の腕の中で納得いかない顔をするローは、ただ私の顔を見て、仕方がないとため息を付いた。

「…何だ、お前」
「私はニナ。このお店の店主です」
「ただの町娘じゃねェな」
「ただの町娘です」
「ただの町娘は、ソイツを呼び捨てになんかしねェんだよ」

どうやら、小さくなったローから私に興味が移ってしまったらしい彼は、口角を上げて笑いながら私を見下ろしている。

「トラファルガーの女か何かか」
「……そうだったら何?」
「…へェ」

短く返事をすると、私を上から下までじっと見つめるキッド。最後にローに目線を送ると、今までより深くニヤリと、笑った。

「悪くねェ。」

する、とゴツゴツした大きな手が私の頬を撫でる。ローが腕の中で「おいっ」と声を荒らげるけれど、別に私はどうってことない。

「奪わせてもらうぜ」
「無理よ」
「ほう?」

キッドの言葉を冷たくあしらってやると、キッドは何故か益々楽しそうに笑みを深めていく。

「俺のモンになれ」
「嫌」
「力ずくがいいか?」
「やれるの?貴方に」
「言うじゃねェか、」

彼が私をどうにかしたいのは、単純にローへの対抗心だ。ローから私が奪えれば、ローは心折れるだろう、俺の方が魅力的で強いだろう。そう言えると思っているのだ、この男は。でも私は、そんな心無い気持ちには、動かない。ぎゅう、とローを抱きしめると、先程まで叫んでいた声が止んだ。
それをキッドはローが諦めたのだと勘違いしてか、満足気な顔をして私の顎をぐ、と持ち上げる。キッドの唇が私の唇に重ねられる。と、ぐっと目を瞑った、その時。
ポンッと如何にも間抜けな音がして、不思議に思う。唇に、何も感触はない。そろ、と瞼を持ち上げると、先程まで私の目の前にいた大男がいない。
ふと、下に目線を落として、私の隣にいつの間にか立った人物の気配を察して、全てを理解した。

「ニナに手、出すんじゃねェ。」

立っているボニーちゃん。そして、小さくなったユースタス・キャプテン・キッド。もちろんこの数秒後、キッドが叫声を上げることになるのである。







波乱は波乱を呼ぶ








大混乱だよ


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