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  30


早く早くとベポたちに手を引かれ、急いでポーラタンク号に向かう。どうしたのと聞いても、とにかく来てと繰り返すばかりで、まったく状況は掴めない。ただただ、ローの身に何かあったのだと心臓がバクバクと速くなる。
そして、あまり出向かない浜辺に停められた船が漸く見えてきて初めて、見たことの無いピンク色の船が隣にあることに気がついた。あの船は、と考えながら足を進めると、ハートの海賊団が大騒ぎをしている様子が伺えた。そして、その隣には

「あっはっはっは!ケッサクだな!!」

そう、笑う…女の子が。(後ろには狼狽えまくっているいい男たちが数人いるけれど)ハートのみんなが「キャプテン!」と叫んでいることに焦り、そこに割入った私は、彼女の顔を見て、ようやく誰だか思い出した。

「…ジュエリー・ボニー…?」
「ん?何だ、お前」

島の奴か、と私のことは特に知らない様子で逆に安心する。そんなことよりと、ハートのみんなが集まっているところに駆け寄ってみて、私は、目を丸くした。

「………ロー?」
「…チッ…」

随分と、小さくなったローがそこにはいて。小さく聞こえた舌打ちが、中身はそのままなのかと想像させた。私は、その姿のローにおずおずと近づく。

「ロー、なの?」
「……さいあくだ」

ブカブカになったアザラシ柄の帽子を取ってやると、確かに、目付きとかはそのままの本当に幼くなったロー本人で。私を顔を見つめながら苦々しい顔をした、その表情すら

「っ、かわいい…!」

こんなの、抱きしめるに決まっている。







「はァ〜?お前、コイツの恋人なのか?」

出した料理が一瞬で彼女の口に収められていく。こういうのはてっきりルフィやエースたちだけなんだと思っていたけれど、そんなことはないようだ。…こんなスレンダーなスタイルのどこに仕舞われていっているのか…不思議すぎる。そんなボニーちゃんが私とローは恋人同士であることを話すと、有り得ねェと顔をしかめる。趣味悪ィぞとも付け足されてしまって、私は苦笑いを浮かべた。

「…いわせておけば」
「けっ!そんな顔したって、今のお前には能力もねェんだから何も出来ねーだろ、チービ」
「てめえ…ボニーやァ…!」

ギリギリと歯を食いしばりながらボニーちゃんを睨みつける小さなロー。(かわいい)当然、小さい故に迫力もまったくない。(…かわいい)

ボニーちゃん、と呼ぶくらいに打解ける結果となったのは、結果としてローを元に戻すにはボニーちゃんを倒す…か、ボニーちゃんに戻してもらう、しかない。私もキャプテン(ほぼ)不在のハートのみんなも、どちらを選ぶべきかなんて、分かりきっていて。
面白半分、嫌がらせ半分で小さくされているだけなのだから、ボニーちゃんに満足してもらって元に戻して貰う方が、平和的解決だ。(ローはずっと「殺す」ってずっと言ってるけど、今のローには無理だしね)
腹減ったと呟いたボニーちゃんの言葉を聞き逃さず、私は彼女たち海賊団とハートのみんなを店に連れてきたのだった。

「ピザおかわり」
「焼くの時間かかるけど、いい?」
「いーぜ、ニナの作る飯は美味いしな!」

にひ、と口の周りを汚したボニーちゃんが笑う。あ、こちらもかわいい。本当にひとつの海賊団の船長なのかと思ってしまう。
ずうっと、不貞腐れて椅子にもたれているローにも何か食べるかと聞くと、「…おにぎり」と小さく言うものだから、それもまたかわいくて、ため息が出た。(しゃけおにぎりにしよう)

「それにしても可愛いね、ロー」
「うるせぇ。もとにもどったらかくごしとけ」
「ふふ、全然怖くない」
「………」
「あっはっは!ウケる!ざまぁみろ!」

ローにおにぎりを差し出しながらそのあまりに可愛らしい姿にきゅんと心臓が鳴る。ボニーちゃんありがとうと思うレベルだ。本人はもうイライラな顔をずっとしているけれど。

「キャプテン、諦めてください…ジュエリー・ボニーに戻してもらう他、方法はないんですし…大人しくしていないと」
「………もどったらバラバラにしてやる」

ペンギンがローの怒りを抑えようと小声で囁いた。それは妥当な内容で、さすがのローもここで暴れる訳にはいかないと大人しく椅子に座っている。(ご飯に夢中のボニーちゃんに聞こえていなくて良かったと思う)
ただこの時はまさか、まさか更に大騒ぎになるなんて想像もしていなかったのだ。







知らぬが仏








勘弁してくれ


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