00 あなたと出逢った日

「…おい!」

「……」


日課の鹿の世話の為に奈良家の所有する森に入って直ぐにそいつとは出逢った。はじめは蹲っているものだからそれが人なのかも分からなかったが近づくと俺と歳もそう変わらない少女がいた。子どもがこの森に入ってしまうことは滅多にはないが、まぁあるにはある。その場合遊ぶ為に入ったつーのが理由なことが多い。いつものように遊び場じゃないことを伝えれば終わりになるはずであった。


「ここは…!ってお前なにしてんだよ!」

「呼んでくれた…から」

「は?」


少女の手の中には薬草。そんな珍しいものではないが奈良家の家柄どんな薬草でも貴重なものは貴重である。この森には鹿からはじまりたくさんの薬草が生えておりその生態調査や管理も奈良家の大事な役割になっているらしい。


「この子塗ったら血…止まるって言ってた…から」


そう言いながら示す少女の膝はどこかで転んで擦りむいてしまったのだろう。傷は浅いが痛々しい怪我があった。そして、持っていた薬草に何やら語り掛けながら膝に塗り込んでいく。その薬草はよく見れば血止めの効果もある薬草だった。


「ありがと、ね」

「お前…」

「っ、ご、ごめんなさい…気持ち悪いよ、ね?」

「何がだよ…すげーな、」

「!」


これが俺とお前の出逢い


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