それは私がまだ幼い頃。両親を早くに亡くした私は親戚の家をたらい回しにされていた。
私は大人が嫌いで、大人の背中が大嫌いだった。
「気持ちの悪い子」
「こら、あの子に聞こえる」
「……私もう嫌よ!あの子の世話なんて!あなたはいいわよ、だけど私は一日中あの子といるのよ!」
「分かった…仕方ない」
よく聞く言葉だった。この言葉を聞いた翌日は何時も違う家の子になっていた。大人は嫌い。私に背中を向けて私の顔なんて目なんて見てくれないから。
「あたし…は」
まだまだ小さな私でも分かっていた。私、は……
「いらない、子……」
声に出してみた泣きはしない。泣くことはもう飽きた。叫びもしない、足掻くことも…私は、ただ堪えるだけ。
私の手はまるで小さな紅葉のよう。この手ではなんにも出来ない。
「クシナちゃん、私のところに来てくれない?」
「……おばあちゃんの、とこ?」
顔を上げれば私と同じ薄い赤毛のおばあちゃんがいた。赤毛は私と私のお母さんだけしかいないと聞いていた。
「やっと会えたねぇ、クシナちゃん」
「………」
「会えるのを楽しみにしていたんだよ?」
「ふ、…ふえ……うわーん!」
初めてだった。私に笑顔をくれる人は、私の目を見てくれる人は。おばあちゃんは私を愛してくれた。
後から聞いた話し、このおばあちゃんは私の実の祖母だったらしい。そして、おばあちゃんの下で中学生の一年の夏まで過ごした。その夏、私に忘れたくても忘れることの出来ない出来事が起こった。