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名も声も顔も知らない私のお父 さん、お母さん。私は今幸せで す。だって、空は相変わらず青 くていつでも彼が傍にいるよう で。片想いだけどさ……初めて人 を想ってそれだけで私は幸せ。


「おはよう、クシナ」

「お、おはよってばね!……あ、 」

「ハハ、本当にクシナは面白い ね。さて、もうすぐ予鈴が鳴る ね。急ごうか?」


あ゛ー!!!また、やってしまっ たってばね!私の想い人の名前 は、波風ミナト。ミナトは、学 校一の秀才で誰にでも優しい 人。初めてミナトに会った日は なんて頼りなさそーな人なんだ ろうってかんじだった……けど、 違った。


「ちょっと、まだ予鈴よ?なに も走らなくても、」

「ん?だってさ走って行った方 が早く着くでしょ?」


ニコッと笑いながら私の手を引 きながら学校までの道を走る私 とミナト。正確には私はミナト に引っ張られているだけだけ ど。 正直少し恥ずかしい。流れてい く景色に映る人たちは私たちを 見ている。いや、ミナトを見て いる。ミナト自身は知らないと 思うけど、ミナトはモテる。容 姿は太陽みたいな綺麗な金髪に 空のような素敵な瞳。オマケに 性格もいい。


「勝ち目、なんて……」

「なにか言った?」

「!、ううん」

「…そ?もうすぐ学校だよ」


あるはず無い。ライバルの多い ミナトだから諦めるんじゃな い。私は、誰かを好きになっ ちゃ駄目なの……それに、誰がこ んな私を好きになってくれる?


「さ、着いたよ?」

「ハァ、朝から疲れたよ」

「ごめんね?…でも、クシナだけだよ、俺のスピードについて 来てくれるの」

「っ、///」


ぽんぽんと「お疲れさま」と言 いながら私の頭を髪を叩くよう に撫でるミナト。たぶん、私の 顔は髪と同じで真っ赤になって る。


「クシナ…?もしかして、やっ ぱりしんどかった?ごめんね? 保健室行く?」

「い、いい。教室行こ」

ミナトだけ。ミナトだけなんだ よ。私の大っ嫌いなこの赤い髪 に触れてくれる人は…ねぇ、期 待しちゃうじゃん。