「ミナト君ってばまた一番!」
「ミナト君に勝てる奴なんていないわよ!」
定期テストの結果が職員室前に貼り出されている。各学年の上位50人はこうやって点数と順位が公開される。俺は一番上の"波風ミナト"の文字の下を見ていた。俺といつも一点差か同点の子の名前を…
「ねぇ、うずまきクシナって子知ってる?」
学年二位なのに名前を聞いたことがない。気になったから近くの女の子に聞いてみた。その子は困ったように(なんで?)笑いながら口を開いた。
「あぁ、あの子には関わらない方がいいよ、ミナト君。だって、あの子の髪は真っ赤で気持ち悪いんだもん」
「…、」
赤い髪の子なら見たことがある。後ろ姿しかないけど綺麗な髪だったのをよく覚えている。
気がつけば俺は教室棟へ走り出していた。
廊下を走る俺を皆が見て驚いていた。俺が廊下を走らない優等生とでも思っていたんだろう。全く、俺を過大評価し過ぎる。
「ハァ、ハァ、」
階段を二段飛ばしで駆け登る。一年生の教室が並ぶのは三階あと一階!!
ドンッ
「うわっ!」
「きゃ、」
勢いあまってぶつかってしまった。やっぱり廊下や階段は走らない方がいいらしい。そんな反省は今となっては遅いわけで俺は慌ててぶつかってしまった人を助けるべく起き上がろうとするが、
「わわ!!ごめんっ、怪我ない?」
尻餅を着いたのは俺の方でぶっちゃけかなり恥ずかしい。足元に見えた上履きには"うずまき"と記入されている。……うずまき!?
「私は大丈夫、貴方こそ大丈夫?……それに階段でふざけたら危ないってばね!」
…ってばね?
俺を叱る人なんて初めてだ。いつも誉められたり羨ましがられたりしかしない人たちとは違う。ゆっくりと俺を叱るうずまきさんを見上げる。
「、おんな?」
「っ!何か言ったってばね?」
「え!い、いや!!」
何コレ!めちゃめちゃ綺麗なのにめちゃめちゃ恐い。彼女の綺麗な真っ赤な髪は彼女の怒りに従ってゆらゆらと揺れている。
「……はい」
「え、」
遠慮がちに差し出してくれたハンカチ。これは、俺が使って良いのかな?
「……血、出てるから止めた方がいいってばね、」
あわあわと俺の頭へハンカチを押さえつけてくるうずまきさん。っいて!ちょっと力強い!!
「ごめんってばね!」
「いや…ありがとう、助かったよ」
そしたら驚いたようにして笑ったクシナさん。それにこうなってしまったのは階段を走っていた俺の方がどう考えても悪い。謝るなら俺の方だ。
「そ、よかった」
「っ、//」
「どうしたの?……やっぱり怪我酷い?」
「大丈夫!、大丈夫だから」
君は覚えてるないかも知れないけど、俺は君のお陰で新しい世界を見た気がするんだ。
目を閉じれば思い出すあの時の優しい笑顔を…