初デートの時間



時は流れて約束の日曜日。遊園地デート当日。集合場所に着いた俺はため息しかでない。その理由は、


「……これどういうこと?」

「まぁまぁカルマ」

「なんでお前らまでいるの?」


なまえと2人で初デートかと思って柄にもなく緊張していた俺の気持ちを返してほしい。集合場所には、磯貝、渚君、茅野ちゃん、矢田さん(中村さんも行きたかったらしいけど、用事があり不参加らしい。それで、いいよ寧ろそれが普通)。


「あの…ごめんね、カルマ君」


今日のなまえはいつもはしない化粧を軽くして、ふんわりとした上品なレースのトップスにズボンは動きやすいデニムパンツ。髪もいつもは下していることが多いけど今日はアップにしている。……一言でいうと、めちゃめちゃ可愛い。


「…いいよ、別に。中村さん達でしょ?」

「あ、うん」

「それより、」

「格好、可愛い」

「え、えっと…あ、ありがとう」


照れてしまったなまえは下を向き顔を隠す。本当だよ。誰にも見せたくないくらい。……俺って独占欲こんなに強かったんだな。磯貝達を少し睨み茅野ちゃん達に少し、少しだけ感謝する。



◇◇◇



「じゃあ!1番はやっぱりジェットコースター!!!」


ということで、<ジェットコースター>。


「……み、みんな乗っておいでよ…私、下で待ってるよ」

「何言ってんのほら行くよ!なまえちゃん!」

「ほ、本当に無理!私、絶叫系無理なの!!!」


みんなのブーイングを受けて結局乗ることになってしまったジェットコースター。この不安定(安全)な安全バーに命がかかっているのかと思うと発狂ものだ。私の意思とは反して頂上を目指す。ガタンガタンとこの焦らしも恐怖を煽るだけの何物でもない。隣のカルマ君も見れば余裕そうな顔でニヤニヤとしている。むかつく。


「ほら、手あげてごらん」

「ムリ!!!死ぬ!!これE組で使うけっこう本気のやつ!!!」


叫び出す私にニヤニヤ顔のカルマ君。後ろの他のメンバーは少々驚いた様子だけど、そんなの関係ない。生命の危機を今私は迎えているのだ。

ガタン、!


「っ!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


。。。


「ぐず、っ……もう、やだぁ……」

「え!なまえ?!」


命の旅というジェットコースターから帰還した私たち。その感動と恐怖から私は堪らず号泣。慌てる面々の中関係ないあんなものもう2度と乗らん!!!

続きましては、<ふれあいコーナー>。


「ふぁ!!犬ー!!」

「ふわふわー」


犬、猫、うさぎなど小動物とのふれあいコーナー。かわいい!かわいい!もふもふと私の靴の匂いを嗅ぐワンちゃんを抱き上げる。ふわふわの毛が私を擽る。癒される時間。カエデちゃんと矢田ちゃんもそれぞれお気に入りのワンちゃんを抱き上げている。


「…なまえちゃん泣き止んで機嫌直ってくれてよかったね」

「本当に、」


そして、お昼の時間。日曜日の遊園地ともなると家族連れやカップル、団体など来場者数もかなり多く。お腹が空くお昼の時間には飲食ブースは人でごった返していた。「うわーっ…、」と、みんなが呆気にとられていた。すると、E組のイケメン磯貝君は「飲み物と適当に何か買ってくるよ」と、率先して人ごみの中へ向かう。


「うわーイケメン」


私の言葉にムッとした様子のカルマ君は「俺も行く」と、磯貝君の後を追う。「じゃあ、男子で手分けして買ってくるから待ってね」と渚君もそれに続いて人ごみの中へ。「なまえちゃん、意外と小悪魔だ」なんて聞こえた気がしたけど気にしない。で、残った女子は食べ物と男子を談笑しながら待つことに。


「君達、お兄さん等と遊ばなーい?」


数分後に現れたナンパ男子たち。最近こんなのばっかりな気がする、もうやだ。周囲を見ればこんなに人がいるのに助けてくれそうな人はいない。カルマたちもまだ掛かりそうだし。


「お兄さんたちカッコいいから遊びたいけど今日は友達がいるから今度ね」

「矢田ちゃん!」

「いーじゃねーか!友達よりさ、俺等と楽しいことしよーぜ!」


矢田ちゃんが私の肩をポンと叩き前に立つ。が、しかし矢田ちゃんの交渉は決裂。高校生であろう男子達は私達に近づいてくる。


「お兄さん達、俺等の連れに何か用?」


その時、殺気全開のカルマ君を先頭に男子達が戻ってきた。ナンパ男子はその殺気にビビりそそくさと退散していった。


「もう、なまえ俺から離れないで!」

「は、はい」



◇◇◇


何とかお昼ご飯を食べた後は<お化け屋敷>へ行くことに。


「なまえ大丈夫なの?」

「た、たぶん、こういう明らかな作りものは比較的大丈夫のはず」


と言いながらしっかりとカルマ君の上着の袖をしっかり掴ませて頂いています。大丈夫だけど、暗くて吃驚することが待ち受けていることは確実だからね。


「そんなに力入れたら皺になる、ほら」


と、差し出されたカルマ君の手。おずおずとその手を掴む。何気にカルマ君と手を繋ぐのは初めての事かもしれない。私はお化け屋敷のドキドキから別のドキドキに変わる心臓を必死に抑えていた。


「本当に大丈夫?」

「う、うん」

「そ、ならよかった」


暗くてよかった。暗くてよかった。今、私の顔絶対ヤバいもん……うん。

無事にお化け屋敷から生還した私たちは最後にと<観覧車>へ行くことに。
すると、先に乗せられたカルマ君と私。ニヤニヤとみんなのゲスい笑顔が見えたけど。まぁ、今日は何だかんだと楽しかったし良しとしよう。


「で、これってデートなのかね?」

「んーどうーだろう?でも、すごく楽しかったよ!」

「……」

「カルマ君?」

「俺さ、なまえと初デートかと思ってさ…何気に緊張してたんだよね、」

「う…それは、その…ごめんね?」

「まぁ、いいけど……今度は2人きりね」


なんて、珍しいカルマ君のデレに私はカルマのこと好きだなぁと再確認。今度は2人でデートしようねとちゃんと約束した。恥ずかしいとかじゃなくて本当に2人で思い出を作りたいと思ったから。

遊園地デート(?)も終盤を迎えて一行はお土産コーナーへ。よく見るお土産からこの遊園地限定のお土産からいろいろと揃っている。


「あ、これかわいい!」

「これ?」

「さっきのふれあいコーナーのうさぎみたい」



◇◇◇



初めての遊園地デートは大所帯になっちゃったけどこれはこれで大満足。みんなの新たな一面が見れて見られて。私も染まってきたなぁと思う。前を歩く渚君、磯貝君、カエデちゃん、矢田ちゃん。そして、隣を歩くカルマ――


(はい、これ)
(え、カルマこれ!)
(欲しかったんでしょ?)
(うん!大切にする!!)

私の手の中にはさっきのお土産コーナーの2対の可愛らしいうさぎ―――