05 集会の時間



月に1度 椚ヶ丘中学校では本校舎で全校集会が開かれる。午前の授業が終わるとみんなは急いで昼食を摂り移動の準備を始める。


「え、もう移動するの?」

「なまえちゃんは全校集会初めてだよね?うちの全校集会は本校舎で行われるんだけど、E組はほら、山の上でしょ?昼休み返上して他のクラスよりも先に整列しとかないといけないんだ」


渚君は丁寧に教えてくれた。なんでも無いように言っているけどかなりの差別だと思う。本校舎には登下校の時に近くを通るくらいしか知らないけど、私をE組ってだけで喋ったこともない他人なのに見下した目でみる子たち。あの子たちが集まる全校集会か…

みんなに習って移動しようとした時、


「なまえちゃん」



◇◇◇



カルマ君に誘われて全校集会をサボってしまった。以前(元の世界で)はサボったこともない素行真面目な学生だったためサボるという行為に不安と緊張ががあったがサボってしまえばなんてことはなかった。いい天気でカラッと乾いたふわふわの芝生の上に2人並んで寝転がる。


「…あんな思い別にわざわざする必要ないしね」

「え?」

「こっちの話し」


この前のGWからカルマ君は何かと私を心配してくれている気がする。年下(中身的な意味で)に心配されるのは少し情けない気もするけれど、これはこれで居心地がいいので良しということにしている。


「そういえばもうすぐ定期テストだね」

「そだね、なまえちゃんどう?」

「どうって…予想通りだよ」


私の学力は普通の公立中学校でも平均学力よりやや劣っていた。しかも、中学時代は遠い昔のことで記憶の片隅には国語では古典・古文があったなとか数学ではサインコサインとかあったなとか英語は……だめだ、簡単(中1レベル)な単語とかしか思い出せない。
予習はして公式などは思い出すが流石は名門校、応用がさっぱり分からず私の学生時代には習ったことのない内容ばかりの教科書たち。


「みんなすごいね」

「E組だけどね」


E組だから余計にすごいんだと思うんだけどな。大人でも挫けてしまいそうな理不尽な差別を中学生の時から強いられるなんて。
…さっきから気になってたんだけど、


「……それ美味しいの?」


話しを遮りカルマ君の飲んでいるいちご煮オレを指さす。見た目はイチゴオレだが、ややパッケージの色が濃くなっている。私の知っている飲み物ではない。


「美味しいよ。なまえちゃん煮オレシリーズ知らないの?」

「シリーズなんだ、」


(飲んでみる?)
(!!?)