うたかた花火-息抜き編- 


「もう、2か月…」

「急にどうした?」

「急じゃないよ。こうやって夜も暑くなってくると私がここに来て時間が経ったんだなぁって」

「そうだな。まだ、夜は寒かったもんな、」


時間が過ぎていくにつれてタイムリミットも減っていくわけで。私はまだ答えを出せずにいた。ナルトはアカデミーが夏季休暇に入ったようで任務以外は部屋で寝転がって本を読んだり、シカマルが昼寝しにきたり。


「あ、ナルトお前夏祭りどーすんの?」

「は、あー、夏祭りか」

「夏祭り?」

「町中に貼り紙貼ってるだろ?ナルト、サクラの奴誘わなくていいのか?」


…。夏祭りに浮かれそうになった私だけど、そうだ。表のナルトならこういうイベント毎ははじゃいでサクラを誘うはず。でも、当のナルトといえばシカマルも負けるほどのめんどくさそうな態度で本を閉じた。


「はぁ、表の俺ならそーだな、……じゃ、行ってくるってばよ!」


おー、流石。人が変わったかのような表のナルトはそのままハイテンションでサクラの家に駆けていった。…ご苦労様です。


「で、なまえはいかねーの?」

「夏祭り?」

「そ、んー行きたいけど」

「めんどくせーこと考えてねーで行きたきゃ行きゃーいーだろ。なまえに邪魔されたなんてナルトの奴思わねーよ」


何だかんだと相談を受けてくれるシカマルは私の良き理解者。私がナルトの邪魔にならないのかな?なんて不安はお見通しってわけ。


「うん!ありがと。シカマル」


◇◇◇


木の葉の里夏祭り当日。私たちは大所帯。ナルト、シカマル、サスケ、サクラ、チョウジ、いの、キバ、ヒナタ、シノ。サクラ、いの、ヒナタは可愛らしい浴衣に髪を上げておめかししてる。うん。可愛い。チョウジはいつ買ったのかリンゴ飴やたこ焼き等々すでに両手に抱えきれないほどの屋台の食材を買占め食べていた。


「…自由だね」

「いつものことだろ」

「あ、ナル…ト」


急に私の隣に現れて手を引き皆から離れていくナルト。「ちょっ!はぐれちゃう」なんて私が言っても、


「別に一緒に回るつもりねーよ」

「でも、」

「楽しみにしてたんだろ?」

「え!しょうがねーから付き合ってやるよ」


ニカッと笑ったナルトは年相応の人懐っこい笑顔で私もつられて笑顔で返事する。
それからは、ナルトといろんなものを回った。でも、忍び世界の祭りは私の知っている祭りとは少しずつ違ってややハードになっていた。射的は鉄砲じゃなくて手裏剣。金魚掬いのポイはポイの大切な紙が本当に柔柔な紙に。


「わ!お面やさん」

「え、いるの?」

「ううん、ふふ」


お面屋のお面は暗部の面を売っていた。ナルト、シカマルの面によく似た狐と鹿の面もある。


「暗部の面なんて売ってるんだね」

「本物は戦闘用でもっと丈夫だけどな」

「なるほど……きゃ、」


あふれる人の波に押される私。その手を何度も何度も掴まえてくれるのはナルト。慣れない下駄をカランコロンと鳴らしながらナルトの隣を歩く。


「あ!」


ヒュー、と高い音が私たちを空へと誘う。見上げた空にはたくさんの花火が打ち上げられていた。綺麗。花火は向こうの世界と何にも変わらない。一緒だ…
一緒だから、きっと花火を見上げるたびに思い出すと思う。この世界のことを忘れてしまっても何度も何度も手を引いてくれたナルトのことを、一緒に見た花火のことを。


「綺麗」


嫌いになれたらいいのに。簡単に忘れちゃえるようなそんな人ならよかったのに。


「また…見たいな」

「…見に来たらいいじゃねーか。…来年も、再来年も…ずっと、」

「!」


来年も再来年も?ナルトの思い描く未来に当たり前に私がいてる。そのことが凄く嬉しい。叶わないことでもいい…今だけは


「うん、」


忘れたくない、あなたのこと

(もう忘れよう 君のこと全部)

こんなにも、愛おしくて

(こんなにも悲しくて)

なんで、出逢ったのかな?

(どうして出会ってしまったんだろう)

目を開けば

(目を閉じれば)

今はまだあなたがいる

(今も君がそこにいるようで)



うたかた花火 より


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