タイプリミットは存在する


ふわふわとした浮遊感。地に足のつかない感覚。これは夢。たまにあるんだよね。これは夢だって何となく確信する時が。そういう時は気づいた途端目が覚めたりすることが多いけど今日は目、覚めないな。


「急に呼んでごめんねぇ〜」

「え、誰」


私の夢なのに知らない変な青年が現れた。へらへらとした表情の読めない彼は変だ。何が変って頭にウサギ耳があるし、全身黒色だし、目が狐みたいに細目だから。


「僕は“ノア”だよ〜。会うのは初めてだねなまえちゃん♪」

「変な夢、」


この青年が私の名前を知っていることには驚かない。だって、ここは私の夢の中のはずだもん。語尾を伸ばす独特なしゃべり方をするこの青年はノアというらしい。ふわふわと歩くこともなく私の目の前に移動するノアは始終ニコニコと胡散臭い笑顔を張り付けている。


「実はなまえちゃんをこの世界に連れてきたのは僕だよ〜」

「は、」

「ごめんねぇー?手違えでなまえちゃんをこの世界に連れてきちゃったみたい」

「え、」

「でも、怒らないでね?僕にかかれば一年で元の世界に戻してあげるよ」

「ちょ!勝手に!!」


唐突に何でもないことのようにカミングアウトするノア。ということは何?私をNARUTOの世界に連れてきた犯人はノアで、もちろん元の世界に返すことが出来るのもノア。っていうか、元の世界に戻れるって急に言われても。


「ん?あれれー?もしかしてこの世界のナルト君にご執心??」

「…そんなんじゃない。でも、」

「んー。このままっていうのももちろん有りだよ?」

「え!本当に?」

「もちろん!でも、一年以上経つと向こうのなまえちゃんの身体を死んでしまう。当り前だよね。身体と精神は二つで一つなんだから。ぶっちゃけ精神がすごく大切なんだよね〜。それと、向こうに帰るとこっちでの出来事は無かったことになるよ〜。もちろん、なまえちゃんのことは皆忘れちゃうようになるってこと!おわかり〜?」

「っ!!」

「まぁー。あと、10か月はあるんだし考えてみてね?」


(夢だけど、ただの夢じゃない)
(私がこの世界にいるにはリミットがある)
(向こうの世界とこの世界、私は…)



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