01 運命の下






「火の国、木の葉隠れの里、」

「ここが今日からお前の里だ」

「はい、父様」


私に選択する権利なんて昔からない。母様が死んだあの日から父様は一族を護るために私のことなんて見てくれなくなった。そんな一族も今や存続の危機に瀕している。そんな中救ってくれるというのがここ木の葉隠れの里である。火影様なんて偉い人にはお目にかかっていないが、相談役という方二人と出会い私がここに来ることが決まったのだ。


「じゃあな、なまえ元気でな」

「父様も、お元気で」


それはまるで永遠の別れであるかのような時間であった。一族にはもちろん親しくしていた者もいる。でも、そんな甘えは私には許されない。早く、この里の者となり慣れなければ…


◇◇◇


木造の建物が多い木の葉隠れの里。流石は大国である。すれ違う人たちは額あてをした忍びばかりである。里の門を真っ直ぐ進んだ先にあるのは火影様のいる建物。
どうしよう、怖い人だったら…

コンコン、


「し、失礼します。本日より木の葉隠れでお世話になるなまえと申します」

「あ?」

「っ、」


扉を開ければそこには鬼の形相の男がいた。驚き声が出ないなまえ。なまえに気づいた男はちょん髷の頭をガシガシとかき溜息一つ。


「わり、驚かせたか?」

「いえ、」

「あー、お前がなまえか?」

「あ、はい」

「…悪いな、今 火影様は別件でここにはいねぇ。住む場所へは俺が案内するわ」

「あ、ありがとうございます。えっと…」

「あー、奈良、奈良シカマルだ」


なまえの云わんとすることが分かったシカマルは名乗る。別件と言った火影様の所在と云えばただのサボりである。その為、シカマルはやや機嫌が悪く。しかし、何も罪のないなまえに当たったことにバツの悪そうにしていた。


「奈良さんありがとうございます。それと、火影様に挨拶をしたいのですが、火影様はいつお戻りになられるんですか?」

「シカマルでいい、親父と被るんでな。それと火影様の予定はまだ先が分かんねぇからな、こっちから連絡するわ。で、いいか?」

「ありがとうございます。シカマルさん」


やや気まずかったシカマルであったが、なまえの笑顔…儚げな笑顔見て少し考える。“あの目、まるで彼奴みてぇだな”と、

一族のために他里に来た。知らない土地、知らない人、知らない常識。だからこそ、“木の葉に慣れておけ”と父に予定よりも早く連れて来られた。父に売られたのだ。大好きだった母様はもういない。私の味方はいなくなってしまった…一人になってしまった。


「…まぁ、いいか。こい」


伏し目がちのなまえを暫し見つめかける言葉を見つけえなかったシカマル。
“めんどくせぇ、柄でもねぇ”同情でもしているのだろうか?めんどくさがりの俺が、だいぶ彼奴に感化されてるな。と、自称気味に笑ってみる。

昨日までのなまえは死にました。
なまえは今日から木の葉の忍びになります。