02 仮面の下






なまえの初めての1人暮らしがスタートした。先ずは、日用品を買い出し中。流石は大国木の葉隠れの里。里は大きく活気があり、商店街は多くの店がある。知らない土地、知らない人、知らない日常。新たな情報を欲して視線はキョロキョロとしてしまう。…その為、前方不注意であった。


どんっ、


「す、すみません。ちゃんと前を向いてなくて…」

「だろうな、いてて…怪我しちまったよ姉ちゃんどーしてくれる?」

「…っ」


巨漢の男はなまえを見下げ声を荒げる。その厳つい体は女性に当たったくらいで怪我する軟なものなのかと尋ねてみたい。しかし、そんな事言えるはずもなくこの場をどうしたものかと暫し考えてみる。


「あ?…姉ちゃん見ねえ顔だな、他所者か?」

「何してんだってば?」

「「!!」」


突然現れた青眼、金髪の青年。貼り付けた笑顔からは息もするのも苦しい殺気が放たれていた。


「いや…これは、」


その殺気に竦んだ男は口ごもり視線を泳がす。そんな男に近づき青年は表情を失くし告げる。


「失せろ」

「っひ」


それからは早かった。男は脱兎の如く去って行った。


「あ、あの…ありがとうございます。助かりました。」


あんな男なんてないが、木の葉に来て早々問題事は起こしたくなかったため助かった。


「いいってばよ!それよか姉ちゃん見ない顔だってば?木の葉へは観光か?」

「いえ…」

「それなら、俺がお勧めスポットに案内するってばよ!俺は“ナルト”!姉ちゃんの名前は?」

「えっと、なまえです…」

「じゃあ、なまえ行くってばよ」


息つく間もなく話すナルトに半ば強引に連れられたそこは、


「一楽?」

「そ、ここのラーメンってばめちゃめちゃ上手いんだってばよ!」

「らっしゃい!!なんだ、ナルトか。そうかそうか、ナルトも彼女を持つ年頃ってか?」

「あはは、そんなんじゃねーってばよ」


ナルトは一楽の常連らしく店主と談笑を交わしながら席に着く。ナルトの雰囲気に交わりながらなまえも楽しい時を過ごした。


「今日はありがとうございました。ラーメンもすごくおいしかったです」

「だろ?」


始終笑顔のナルト。その笑顔は安心する。でも、気づいてしまった。すみません。


「なんで、無理して笑うんですか?」


「…何言って、」


なまえは昔から人の表情や雰囲気に敏感であった。だから、ナルトの笑顔の違和感に直ぐに気づいてしまった。

ナルトは目を見開き驚く。ドベの意外性bPドタバタ忍者。火影に憧れる只の悪戯小僧。であったナルトは世間から見たもの。本当は、生まれたその日に両親を亡くし、九尾の人中力として生を受け、人からは恐れられ幾度も命を狙われた過去を持つ。人間不信、やや人生に諦めていたこともあり知らず知らずのうちに笑顔で場を流してしまう癖がついていた。
ナルト自身ももう笑顔なんて忘れていた。今、少女に言われて思い出した。


「目です」

「目?」


一族を守るため…
なまえの一族は国や里を渡り歩き任務をこなし生活をしていた。もともと特殊な能力のある一族であったため狙われることも多く自分の身は自分で護るのが一族の掟であった。しかし、そんなある日一族はある組織により襲われた。一族は壊滅状態。その反乱の中最愛の母を無くした。もともと、父はなまえを良くは思っておらず今回木の葉に援助してもらう代わりに娘を売ったのだ。

“私と同じ諦めた目”なんて言えない。周囲の顔色を伺い細々と生きる。


「ナルトさん」

「何だってば?」

「また、ラーメンご一緒したいです」

「おーなまえは不思議なだってばよ!」

「ふふ、お互い様です」


もう、ここ一族はいない。父はいない。

昨日までのなまえはいない。
今日からは木の葉のなまえとして。