いろはにほへと ちりぬるを
女中波乱篇 03

「攘夷浪士の密談場所が割れました!」

「よくやった!山崎!!」

「てめーらぁ!明晩奇襲をかける。一番隊は正面から、二番隊三番隊は側方から十番隊は裏口を固めろ!」


町が眠りについた夜、真選組は山崎が入手した攘夷浪士の潜伏場所を包囲していた。作戦に抜かりはない。ただ、なまえの初出動であること以外。しかし、それも特に問題でないはずである。なまえは沖田と組ましてあるし実力は申し分ない。
のはずであるが、沖田が後ろのなまえをチラリとみると柄に手をかけ明らかに息が荒い。緊張している様子である。


「なまえ初出動だからって緊張してんのかィ?」

「ばか言わないでくださいよ」

「おい、お前顔色悪ィぞ」

「だから、大丈夫ですってほらもうすぐ合図きますよ」


“大丈夫”その言葉は昔からなまえの口癖のようなものであった。その口癖はそうなる様に自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。

#hame#は柄に伸ばす手を緩め脇腹を撫でる。どくどくと疼くそこは熱を持ち痛む。肋骨にヒビくらいいっているだろうか?しかし、折れていないであろうから肺に刺さる心配はないしこのくらいの浪士相手なら大丈夫であろう。

こういう状態の時、思い出す…大切な人(先生)と交わした約束を、


「なまえいいですか?絶対に死んではいけませんよ?」

「痛いから?」

「そうですね。死んでしまうことは痛いかもしれない、苦しいかもしれない。しかし、正確に言えば“一人で死んでしまってはいけない”のです。何故だかわかりますか?」

「んー、分かんないよ先生」

「それは、貴女の為ではなく皆の為なんですよ。なまえは私が突然死んでしまってはどう感じますか?」

「えっ!やだよっ!すっごく泣いちゃう」

「ええ、私もです。なんで死んでしまったのか、その時何を感じていたのか知りたいですよね。
だから、絶対に一人で死んではいけませんよ」



優しい先生。大好きだった。
大丈夫。一人じゃない。

ドーン!!!

爆発音、それが突撃合図である。

「御用改めである!真選組だぁぁ!お縄につきやがれぇぇぇ!!!」


さぁ、戦闘開始だ!!!


(自分のため)
(護るもののため)
(剣を振る!)

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あさきゆめみし ゑひもせすん