妬み





「………」


頭の中がまだぐしゃぐしゃで正直学校なん て行く気分でない総悟だが、担任の銀八は 欠席には兎に角五月蝿いので重たい足どり で取り敢えず学校に行くことにした総悟。 教室棟の廊下を歩いていると何時もよりも Z組の教室が騒がしい。特に気にするでも なく教室に入ろうとした総悟だが、教室か らの“沖田くん”という女子の声に立ち止まった。


「あんた、生意気なのよ!」

「ちょっと転校生だからってちょーし乗り 過ぎ!!」


廊下まで響く女子の怒鳴り声は最早女子の 声とは思えないドスの聞いた声。 総悟は誰が誰に言っているのかなんて声や会話を聞いただけで分かる。しかし、今ここで自分が出ていき、自分は何を一体する んだ…?と、思うと総悟は動けないでい た。


「お前聞いてんの!!?」


ドンッ


「きゃああっ!」


ガラガラと大きく動く椅子や机の音と共に 気づけば総悟は教室に入っていた。


「!、……お、きた…くん」


教室には大半のクラスメイトが席に着いて いて他人事のように傍観しているのみ。そ して、化粧の濃いケバい女が三人なまえを囲んでいた。そのうちの一人が俺を呼ぶ。 …気色悪ィ……

「テメーら何やってんでィ?」



俺は心底機嫌が悪い。俺自身が吃驚するく らい冷静じゃない。 なまえは力無く椅子や机と共に床に倒れていて体の至るところには青たんが出来てい た。 なまえの小さな体はボロボロだった。今まで俺はこんな酷いことをしていたのかと今さらになって気づいた。さらに、こいつら (ケバい女子三人)に虐められたなまえ。 全て俺のせいだ…!


「…失せろ!」


俺が下を向き言えば声もなく出ていく馬鹿 な女子ら。俺はなまえに駆け寄る。


「わりィ…おれ」

「…大丈夫?」


上半身をできるだけ優しく起こしてやる が…辛そうに顔を歪める。だが、心配され たのは俺だった…


「!…なんでィ?痛いのはオメーだろ?」

「……ん、だけど。心の傷はすっごく痛い でしょ?……それに治りにくいんだよ?」


よしよしと俺の頭をなでるなまえの細い腕。その腕も痛々しい傷がいっぱいだっ た。


「…っ、わりィ……すまねィ、…すまねィ……!」


俺はなまえが痛くないようにでも、離しは しないようにぎゅっと抱きしめた。


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