2018 BD by 綾さん
深夜、スマホのデジタル時計で0が3つ並び、日付が変わったのがわかるーーー今日は私の誕生日。
彼氏の隼人くんからは、日付が変わってから数分後にお祝いのメールが届いた。
だけど、今現在も大学の飲み会に参加している隼人くん。隼人くんと私は高校時代からのお付き合いだ。日付変更後の夜中の誕生日すぐに会いに来てくれる、なんて漫画のようなイベントが発生しないことは、すでにわかっている。
誕生日当日の今日も、隼人くんは部活の練習で会えないと言われている。すっごく申し訳なさそうに謝られたけど、練習なら仕方がない。私はロードで走っている隼人くんも好きだから。
隼人くんからのお祝いメールを眺めている間にも、ありがたいことに友達からお祝いのメールが続々と届いていた。一通りメールを返し終えてから、再び隼人くんのメールを開く。
[名、Happy Birthday!おめでとう!誕生日当日は会えなくてすまねぇな……良い誕生日を過ごしてくれ!]
文章の最後にウサギの絵文字が入っていた。ウサ吉もお祝いしてくれてるってことかな?
メールの画面を指で軽くつつく。
本当に会えなくて悪いと思っているなら、必死になって会いに来いっての!
大学も創立記念日で休みで、朝起きてからの予定はない。だけど眠たくなってきたのでベッドに入り、横になる。
*
朝起きると、外ではすでに日が昇り、明るくなっていた。
部屋に置いてある時計の針は、10時を指している。どうりで明るいはずだ。久々に時間を気にせずゆっくりと寝られた気がする。
とりあえず顔を洗ってから、ダラダラと洗濯などの家事をこなしていると、借りている部屋のすぐ外に設置されているインターフォンが鳴った。母から誕生日のプレゼントを送ると連絡が来ていたので、きっとそれだろう。受け取りのために家事の手を止めて、玄関へと向かおうとする。
ーーーちょっと待って。私の住んでいるアパートは防犯がしっかりしているから、宅配ならエントランスからの呼び出しが先にかかるはずだ。
では誰が直接インターフォンを押すのか?
足音を殺して、玄関の扉に近付きドアスコープを覗いた。そこには……
隼人くんがいた。
へっ!?なんで隼人くんが?!
急いで玄関のドアを開ける。
「なんで!?隼人くん、練習は?!」
「おはよう、名。おめさん、せっかくの誕生日なのに、寝起きって感じの格好だな」
「っ!?私の格好はいいとして、部活あるんじゃないの?」
服装を見られた後では意味がないが、慌てて両手で体を隠して尋ねる。
「部の方には部活はもともと休むって、連絡入れてたさ」
「えっ?じゃぁ、会えないっていうのはどうして?」
部活がないなら、初めから私の誕生日を祝ってくれてもいいのに……わがままかもしれないけど、彼女だしこれくらいのわがままは許されるでしょ?
「それは……嘘ついてすまなかったな……名のためにコレを作ってて、何時に会いに来れるかわからなかったから」
そう言って隼人くんが私の前に出してきたのは、白くて大きめの箱。この見覚えのある箱の形は……
「……ケーキ?」
「おっ、よくわかったな。悠人に作り方聞いて、名のために誕生日ケーキを作ってみたんだ。何度も試作で練習していたから、今朝のコレは思ったよりも早く完成した」
「なんで?」
「ほら、サプライズってヤツ?……見た目は市販のケーキみたいに美味そうじゃねぇけど、味は保証するぜ?」
隼人くんがバキュンポーズで私を射抜いてくる。
「……んだから……よね……」
「ん?何て言った?」
「嘘ついた事、こんなサプライズだけでは、許してあげないんだから!今日は一日使ってお祝いしてよね!」
それだけ告げると、私は勢いよく隼人くんに飛びついた。
「わっ!ケーキが落ちちまう!」
「落ちて形が崩れても、私が全部食べるから平気!!」
「ケーキ、オレにも食べさせてくれよな!?」
家で2人で仲良くケーキを食べた後、プレゼントを買いに一緒に買い物に出かけた。
夜には隼人くんがディナーのお店を予約していてくれて、ここでもお祝いのケーキが出てきた。
今年は忘れられない誕生日になりそうだ!
ーーーその後しばらく、私のスマホの待ち受け画面は隼人くんが作ってくれたケーキの画像だった。
綾さまに頂いた誕生日プレゼント