wazatodayo

 04


学校で一番仲の良い友人にインターハイを見に行くと告げると、どうやら彼女は1年の頃、彼氏ができる前まで、東堂くんのファンをしていたらしく、観戦に行く心構えのようなものを教えてくれた。
目の前を通り過ぎるのは、本当に一瞬だから逃すなと言う忠告付きで。

「それにしても、名がチャリ部の応援行くなんてどうしたの?あ、あの新しい1年生くんのファンになっちゃった?」

新開くんのことは誰にも話したことがなかったけれど、彼女には話しても良いだろうか。恐る恐る口を開く。

「実はね」

それから私は彼女に今までの1年間の出来事を話した。

「名、もう!なんで今まで黙ってたの!もう!言ってよ、応援するのに」
「だ、だって、新開くんのことが好きなんて、私には不相応というか…」
「そんなことないよ!」
「新開くん、人気者だしさ」
「でもそんな新開くんにインハイ来て欲しいって言われたんでしょう!?しかも応援場所指定とか…もう羨ましいよ!インハイ来てほしいなんて言われる女の子いないよ!素敵!」
「誘われたのは、正直…ちょっと、嬉しかった、かな」

そう言うと彼女は私の方を見て微笑み「新開くんの話してる名、今までで一番可愛い、だからもっと早く教えて欲しかった」と頬を抓った。

「ついて行ってあげたいんだけど、彼が東堂様にヤキモチ妬いちゃうからごめんね」なんて謝る彼女に笑顔で首を振る。

「ラブラブだね」と言うと照れ臭そうに笑う友人はとても幸せそうで。

「名だって、新開くんとラブラブになれるよ」なんて言うから首が千切れるのではないかというくらい物凄い勢いで首をブンブン横に振った。

***

「ぜーーーったい!こっち!このワンピース!目立つって!ね!」

夏休みに入ると、世話焼きの友人に連れられ横浜にある洋服屋に行った。

「今日は名がインターハイを見に行く時にすぐ新開くんに見つけてもらえて、かつ可愛い洋服を探す!」と意気込んで朝8時に家を出発してくれる友人を持てたことが何よりも幸せだと思う。

「変じゃないかな…」
「可愛い!超可愛い!新開くんのこと考えてる名は一段と可愛い!!」
「もう…」

手に持たされた水色のワンピースは確かに可愛くて、でもあまりの可愛さに自分には似合わない気がしてソワソワした。

「新開くんは人気だし東堂様みたいに公式ファンクラブとかないから!結構ガチな子多いんだよ!だから目立たないと埋もれちゃうよ!」
「そ、そうなんだ…」
「3日間行くの?」
「3日間来て欲しいって言われたから行こうかなって…」
「きゃー!!じゃああと2着選ばなきゃ!」

慣れない服屋におどおどしてしまう私を尻目に次から次へと服を手渡し試着室へ連れて行く友人に圧倒されながら、どうにか3着のワンピースを購入した。

「名、新開くんのことちゃんと応援できるといいね」

お礼に、と入ったカフェで友人がとても優しく言うものだから、なんだかすごく照れ臭くなって。

「気付いてもらえるといいな」

自分の気持ちを言葉にすると、余計に想いが込み上げてくる。

「あー、もう名可愛い!今の顔新開くんに見せてあげたいくらい!」とまた騒ぎ出した友人をどうにか宥めて頼んだカフェラテを飲みきった。

家に帰り今日買ったワンピースを3着、部屋に並べる。

それは私が普段買わないような可愛らしいワンピースで、気合い入りすぎてないかな…なんて少し心配したけど、これで新開くんに見つけてもらえますように。と願った。

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