なんとなくついているだけのテレビから、ニュース番組が流れている。ああ、今夜は熱帯夜だと。


「あついー。こんな暑いと、夏バテしちゃうよ」

「こんなんで暑い暑い言うてたら、広島住めんぞ。ナマエ」

「なになに、ちゃっかりプロポーズですか健二くん」


そんなんと違うわ、と健二は私の隣に座った。ベッドに寄りかかるようにしてフローリングに素足を伸ばせば、いくらか涼しい。パイル生地のショート丈パジャマから覗く太ももに、健二の掌が這った。


「べたべただよ」

「全然」


バスケをやっているからか、生まれつきなのか、健二の手って大きい。
ゴツゴツしたそれが私の内腿を撫でまわす。際どいところをまるで狙っているかのような手つきで触ってくるもんだから、思わず彼の手首を掴んで制止した。
おもちゃを取られた子供みたいな顔をする。確信犯だ。


「う、わ。蚊に刺されてんじゃん、ここ」

「もともとあったで、気付かんかったんかい」

「あー痒くなってきたー。蚊に刺されってさぁ、気づいた途端痒くなるよねえ」

「おお、それすっごい分かるワ」


知らぬ間にやられた蚊に刺されがぷっくりと赤くなってしまっている。痒いけど、掻いたらもっと痒くなる。我慢。


「それにしても、今年も暑いねえー」

「暑いのう」

「けんじー」

「なんじゃ」

「今度かき氷食べよー」

「ええのう、かき氷。ワシ宇治抹茶」

「あー、そっか。甘いの嫌いだもんね」

「抹茶もまぁまぁ甘いけどの」

「わたしメロンにしよーかなー。ブルーハワイもいいな。あーでも定番のイチゴも捨て難い」

「全部食ってけばエエじゃろ」

「付き合ってくれる?」

「ええよ」

「やったー」


こて。健二の肩に頭を乗せると、健二の腕が私を抱いた。


「練習多くて忙しいけど、夏休み長いし、色んなことしようね。花火とかさ」

「おお」

「海とか行きたいなあ」

「行くか?」

「あーでもダメ。健二かっこいいから逆ナンされちゃう」

「アホか。お前の方が心配じゃけぇ、海行くんならワシから離れたらあかんで」

「ふふ、はーい」




(夏休みはまだ始まったばかり!)

12.07.26

タイトル→Aコース様

mae tsugi