前々から思ってたけど、鷹山って全然笑わない。ポーカーフェイスって感じ、生きてて楽しいのかな

「別に、笑う=人生楽しめてる じゃないでしょ」

彼に聞いたことがある。そんなブッスリしてないで口角あげたら?って。笑わない生活って楽しいの?って。そしたら鷹山はお決まりのブッスリした形相で上のセリフを返したんだ


「僕ヘラヘラしてるの嫌いだから」
「ヘラヘラと笑顔は違うわよ?」
「一緒だよ」
「ふーん、まぁ人それぞれだから否定はしないけど」


隣に座っている鷹山に向き直る。彼はフェンスに背中を預けたまま視線だけを私へ向けた。屋上は風がよく通るから気持ちいい


「でもさ、ヒョウはいつもヘラヘラしてんじゃん!一緒に居て嫌じゃないの?」
「別に、嫌じゃないよ」
「前から思ってたけど、本当意外な組み合わせだよねー 鷹山とヒョウって」


サラサラの黒髪に指をすべらせた。少しうっとおしそうな面持ちを見せたあと、コバルト色の空を見上げる彼。気を引きたくて、試しに一本毛髪を抜いてみた


「痛い やめて」
「あぁ、ごめん 余りにも鷹山とヒョウが仲良しだから妬いちゃった」
「……」
「きっとヒョウには、君も笑顔を見せてるんだろーなぁ」
「な、なにそれ」


僕だって全く笑わないわけではないよ、と続けた鷹山に抜いた一本を返したら要らないと拒否された


「私もヒョウみたいになろっかな!」
「……」
「やめとこっかな!」
「うん、やめた方がいい」
「…でもさー、ヒョウみたいなタイプってモテるよね」
「なにいきなり」
「いや、あいつモテるじゃん?私も彼氏にするならヒョウみたいな人がいいもん」
「へー なんか煩いカップルになりそうだね」
「そんなことないっしょ」
「…煩い同士じゃ合わないんじゃない?」
「? なんで鷹山ムっとしてんの?」
「してない」
「してる」
「してない」
「してる」
「じゃあしてるでいいよ」
「うん、してる」
「……」





「僕みたいなタイプの方が合うんじゃない」
「じゃあ彼氏ほしくなったら鷹山にお願いするよ」
「それは嫌」
「えーなんで!?」


真顔で嫌だと言われたけど、私にはそれが笑顔に見えた。なので、もう一度「鷹山となら付き合えるよ!」とからかってみたら、今度は照れたような顏をした、ように見えた





mae tsugi