「…と、ゆうことで分かったか?」
「わかんねえよ」


静が露骨にいやな顔をした。


「なんで?」
「お前に見せるほど、安くねえし」
「スマイルはプライスレスだ!」



いやなヤツ、いやなヤツ、いやなヤツ。

静なんかおじいちゃんになったらホッペの肉たるみまくって、ブルドッグみたいになるぞ。きっとなるぞ。


「なんねーよ」
「なんで言い切れるのさっ!」
「バスケしてるし」
「バスケは顔の筋肉使いません〜」
「お前、まじしつこい。 俺しつこいヤツ嫌いだから」



うっわ!陰険王子!

私だってねえ!静みたいな無愛想なやつ嫌いだよ!


「だったら慣れ慣れしくしてくるんじゃねえ」
「えー!だって奇跡の瞬間見たいし」
「奇跡でもなんでもねえよ。 人の笑顔を奇跡扱いすんな」
「わーお、こっわーい!静くんが怒ってる〜」
「怒ってねえよ」


はあ…と静がため息をついた。

なにさ、そんなにウザい?でも静の笑顔が見たいんだもん。



「静、スマイル!スマイル!」
「…なんなわけ?」
「写メに収めるから!笑って!」
「………だる」




「だって!インハイ優勝した時の記念写真とかどうするわけ?そんな顔で撮るの?」
「知らねえよ。 普通に撮るよ」
「せめて微笑むとかしなよ…」
「考えとくわ。 な、だから部屋戻れ」
「戻らなーい!!」


しつけーよ、と静が吐き捨てた。


「じゃあ、私が笑わせてあげるよ」
「へえ。 どうやって?」
「変顔!私の特技だから!」
「……それやったら部屋戻れよ」
「う、うんっ」


私は静のスマイルを見るべく、とっておきの変顔をした。この顔を見て笑わなかった者はいない。



「ほ、ほお?」
「………」
「ほもしろひでひょ?」
「よし、そのまま180度向き直れ」
「あ、わかった!笑顔見られるのが恥ずかしいんでしょ?」
「ああ、そうだ。 ついでに笑い声聞かれるのも恥ずかしいから前進してくれ」
「静って恥ずかしがりやなのね〜」




バタン!

「えっ」
「早く寝ろよ。 おやすみ」
「え、えぇ!!ドア閉めたよこの人!」
「騒ぐな、うるせー」


な、なんだよなんだよ!
人がせっかく笑わしてあげようと、死力を尽くしたってのに!


「…このクソやろう!バカ静」


ドカッ!とドアを一蹴りして、廊下を歩いた。
静のやつ、感想くらい聞かせろよな。


















「……ふ、」


笑ってこらえて!
12.03.17

mae tsugi