061 (10/21)
「どこさ?」
珍しく騒がしいナマエに引かれるまま、ナマエの部屋に入ったが、それらしい奴は見当たらない。
「…さっき、居たもん」
心底嫌悪そうな顔をしているところを見ると、居たってのは本当らしい。
きっとたぶん、ナマエが目を離した隙に隠れたか、ゴキブリ自身びっくりして窓から逃げたんだろう。
ナマエにそう伝えると、居る。絶対まだ居る。とかなりビビってる。
「探してみっけど、たぶん見つかんないべや」
「……やだ」
普段のナマエからはかけ離れた子供っぽさに、少し笑ってしまう。
いやいや、でもさ。やだっつっても見つからないモノは見つからないべー。
「やっぱいないや。逃げたんでね?」
「どこかに隠れてる、絶対」
その自信は一体どこから来るのか。
てゆうか、ナマエって虫ニガテだったんかい。知らなかった。
「見つかるまで、この部屋に居れない…」
「うーん…」
綺麗に整頓された部屋なのに、ナマエは居心地が悪いと言った。
まあ虫と共生すんのは、ヤダけどさっ。
俺の部屋よりかは全然キレイで居心地いいんじゃないか、こっち。
「…豹、」
「ん?」
「お願いがあります」
「は、はい、ナンデショウカ」
ナマエは申し訳なさそうな顔でこう言った。
「今日、一緒に寝ていい?」
「…お、おうっ」
なんか急に照れ臭くなった。
12.10.05