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「どこさ?」

珍しく騒がしいナマエに引かれるまま、ナマエの部屋に入ったが、それらしい奴は見当たらない。

「…さっき、居たもん」

心底嫌悪そうな顔をしているところを見ると、居たってのは本当らしい。
きっとたぶん、ナマエが目を離した隙に隠れたか、ゴキブリ自身びっくりして窓から逃げたんだろう。
ナマエにそう伝えると、居る。絶対まだ居る。とかなりビビってる。

「探してみっけど、たぶん見つかんないべや」
「……やだ」

普段のナマエからはかけ離れた子供っぽさに、少し笑ってしまう。

いやいや、でもさ。やだっつっても見つからないモノは見つからないべー。

「やっぱいないや。逃げたんでね?」
「どこかに隠れてる、絶対」

その自信は一体どこから来るのか。
てゆうか、ナマエって虫ニガテだったんかい。知らなかった。

「見つかるまで、この部屋に居れない…」
「うーん…」

綺麗に整頓された部屋なのに、ナマエは居心地が悪いと言った。
まあ虫と共生すんのは、ヤダけどさっ。
俺の部屋よりかは全然キレイで居心地いいんじゃないか、こっち。

「…豹、」
「ん?」
「お願いがあります」
「は、はい、ナンデショウカ」

ナマエは申し訳なさそうな顔でこう言った。

「今日、一緒に寝ていい?」
「…お、おうっ」

なんか急に照れ臭くなった。

12.10.05