029 (12/23)

翌日、叩いたノック音への応答がなく静かに豹の部屋の扉を開くと、彼は爆睡していた。
めくれ上がった寝巻きから見える割れた腹筋に、「おお、割れてる」なんて感動を覚えながら、静かにお腹をしまってあげる。

「ん〜…むにゃむにゃ…」

寝かせてあげたいけど、遅れてしまうのは困るから豹を起こした。
二人して豹のお母さんが作った朝食を食べて、豹が女子アナのナカミーに夢中になっている間に、出発の時間が来た。

「時間だよ豹、行くよ」
「ちょいと待ってや!」

食器を片付けて、エナメルを担ぐ。

「朝から騒がしいな、お前たちは」
「試合だからよ、昨日話してたでしょ」
「ああ、そうだったな。頑張ってこいよ」
「二人とも、いってらっしゃい」

豹の両親の会話を背に受け、いってきます!と元気よく家を出た。


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集合場所には同じ一年生が既に全員揃っていて、あと数人先輩たちが集まっていた。
のちに続々と先輩たちと監督が集まり、みんなで歩いて会場に向かう。
会場はうちの学校より少し広い体育館。
コートはハーフ二面、多分男子と女子に分かれてやるんだろう。

難なく開会式を終え、第一試合が始まる。
男子の試合が三試合目、女子はその次の次。
時間あるな〜と思っていたが、意外にも時は早く過ぎた。

「スタメンはいつも通りだ」
「「「はい!」」」

4、5、6、7、8、背番号が綺麗に並ぶ。
向かい側の応援席に女子が座った。

私たちの学校は、ここら辺の地域では万年一回戦負けの弱小校…で評判らしい。
二つ上の先輩が話しているのを聞いてしまった。

「あーあ、男子また負けちゃうんじゃない?」
「うちら男女揃って弱小だしねー。 監督怖い割に弱いってどうなのよ?」

三年のユウカ先輩とルイ先輩の会話が耳に入る。

「あ、でもさ、あの子いるじゃん!」
「あの子?」
「ほら、あの!」
「…ん?ああ!不破くんね!」
「そうそう、不破くん!あの子すごくうまい」
「期待の星ってやつね」

ブザーと共に試合が始まって両チームの応援が始まる。

開始5分後、「ルーズ拾えるだろぉが!」監督の怒声が飛んだ。
ひい!とユウカ先輩とルイ先輩が凍え上がるのを横目に、コートを眺める。

「すんません…」

小さく頭を下げた8番の先輩に、やる気がないのならすっこんでろ、と監督が静かに低く唸った。

「監督、今日機嫌悪くない…?」
「男子に勝ってもらわないと私たちが増して怒鳴られるんだよね……」

ブザーがなってタイムキーパーが立ち上がる。

「交代、白」

8の番号がベンチへ戻ると同時に、鮮明なオレンジ色。

「期待してるぞ、不破!」
「ヤー♪」

地区大会なんかじゃお目にかかれない鮮やかでド派手なプレーが観れるのだ。
私をはじめ、監督や先輩の目の色が変わった。