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薄暗い部屋で携帯をいじっていた。やることがない。
本当だったら今頃は、豹と一緒に漫画でも読んでる時間なのに。仲悪くなってから、私の毎日は穴がぽっかりと空いたように、空白の時間が増えた。
その代わりに、笑顔は減った。
どれだけ豹と一緒の時間を過ごしていたのか再確認する。彼は私にとって、かけがえのない大切な存在だ。
私にとっては。
豹にとって、私はどんな存在だったんだろう。
きっと、私が豹を大切に思うように、豹だって思ってくれてると、勝手に信じ込んでいた。
違ったのかな。
どうでもいい、嫌いだ、この言葉を豹から受けるなんて、正直思ってもみなかった。
もう、前みたくは戻れないのかな…。
また泣いてしまいそうになり、慌てて目を閉じた。
「ナマエー…」
……豹?
「ナマエー、寝てるのかいー?」
久々に名前を呼ばれて、体が強ばった。反応した方がいいのかな…。
でも、ドアの向こうに立っているだろう彼に今更どんな顔を向ければいいのかわからない。
バクバクする心臓を抑えて、携帯を閉じて咄嗟に寝たふりをした。
しばらくして、ドアの開く音がする。部屋に人の気配。
すぐ近くに、豹がいる…。
「ナマエ、ごめん。お前のこと傷つけたべや」
覚えのある大きな手で、前髪を撫でられた。
豹の匂いがふわっと鼻を掠めて、堪えていた涙がもうそこまで来ていた。
静かに閉まったドアの音を確認して、ゆっくり薄目を開けた。もう自分以外には誰もいなかった。
「…豹」
やっぱり、前の二人に戻りたい。たくさん話して、一緒に漫画読んだりゲームしたり。くだらないことでお腹を抱えて笑い合いたい。
…バスケだって、まだ教えてもらってないこといっぱいあるもん。
アヤちゃんが言ってた通り、ちゃんと話そう。思ってることとか、全部。
前は私のこと好きだって言ってくれたもん。
もっかい、好きなってもらいたい。
15.12.18