急いで書いたのでかなり雑です、すみません。




不動と一緒に住んでいるマンションで、俺は一人あいつの帰りを待っている。

不動がゴッドエデンの調査に向かってから、かなりの日数が経った。けれど不動からの連絡はない。ゴッドエデンは圏外らしいから、仕方ないが寂しい。
高校を卒業し、俺たちはそれぞれ別の道を進んだから、六年間遠距離恋愛を続けていた。その時も寂しいと感じたことはあったが、こんなに胸が苦しくなったことはない。
そんなになるまでに、俺は不動の事を……。

会いたくて仕方ない、今すぐにでも不動を抱き締めたい。再会した時には俺の背丈なんか簡単に追い越していた、あの広い背中に腕を回したい。

俺が帝国のみんなを心配しているのを知っていたから、不動は俺の分まで働いてくると言って潜入調査を引き受けてくれた。
お陰で帝国学園に残された問題は無事解決したのだが、それでも不動は帰ってこない。

怪我はしていないかな。ものすごく心配だ。連絡が取れないからこそ安否すら分からない。まさかこんなに帰ってこないなんて思っていなかったから、何かあったんじゃないかと不安になる。もう毎日毎日不動の心配をしては帰ってこなくて落ち込む、その繰り返しをする自分に呆れてしまった。

こんなことなら俺も一緒に行けば良かったな

俺はこんなに女々しい奴だっただろうか。否、子どものときはこんな風に"会えなくて寂しい"みたいな気持ちにはならなかったし不動がいなくても自由に過ごしていた記憶しかない。

不動と同棲を始め、不動と暮らしていくうちに俺は変わっていった。自分では自覚がなかったが風丸や吹雪には益々綺麗になったと褒められた。

「不動君の力だよ」

吹雪言った通りだ。不動に抱き締められてキスをされて、身体を繋いで愛を囁き合ううちに俺の中で不動の存在が大きくなっていた。もっと愛したい、愛されたい、そんな欲求が身体の芯から湧き出てくる感覚。俺はもう不動なしには生きて生けないのだろう。それほどまでに俺は不動を求めていた。早く会いたい、一刻も早く……





ゴッドエデンにいた子ども達を全員解放し、俺たちの任務は全て終了した。

「みんな、ありがとうな。潜入調査の件、心から感謝してる」

「でも本当に良かったね、これで全部解決解決。ってな訳で、このあとみんなで呑みに行こうよ」

最後に雷門中の生徒を送り届け、大人だけになったバスの中で言った吹雪の言葉に、風丸たちはすっかりその気になっていた。

「確かに、久し振りに呑み会もいいな!」

「俺たちも一段落着いたしいいんじゃないか」

「不動君も行くよね?」

「いや、俺は……」

勿論こいつらと呑み行くのも楽しいだろう。でも俺が今一番会いたいのは――
返答に困っている俺を見て、鬼道クンはフッと笑った。

「お前も随分愛妻家になったものだな」

「なっ……」

「早く佐久間に会いたいってか」

「いいねぇ熱々で」

鬼道クンの一言により冷やかしが始まる。うるせぇと言い返して俺はバスを降りた。

「じゃあね、今度また佐久間君も誘って呑もうよ」

「おう」

俺は吹雪達に手を振って、バスを見送った。

佐久間は元気だろうか。あいつは寂しがり屋だからめそめそ泣いているかもしれない。
前は付き合っていても、お前なんかいなくたって構わないなんて平気で言ってくるような奴だったのに、大人になって再会してからは随分と可愛らしくなったものだ。

性別の区別がつかなくなるどころかどんどん綺麗になっていく佐久間。ガラスのような華奢な身体を、壊したくなるほど抱き締めたくなる。それくらい愛しさが募っていた。

そもそもゴッドエデンに行かせなかったのは、危険な任務だと聞いていたから。佐久間を危ない目に遭わせることは絶対したくなかったし、けれどそんな理由じゃ佐久間は行くと言うだろうから、帝国の仕事を頼んだ。
会えないのは辛かったものの、実際危なっかしいことも多々あったので行かせないで良かったとホッとした。

今は連絡が通じるが敢えて掛けない。ちょっとしたイタズラ心だ。
一秒でも早く佐久間を抱き締めたい。あのさらさらの髪に触れて、柔らかい唇にキスをしたい。マンションへ向かう足がどんどん早くなる。するとケータイが鳴った。

「ったく誰だよ」

歩いている足は止めずケータイを開くと一件のメール。送り主は意外や意外、鬼道クンだ。

件名:俺だ
本文:急ぎすぎて転んでしまえ

「は……?」

なんだこれは。所謂イタメというやつだろうか。こっちは佐久間に会うために必死なんだ鬼道クンに構っている暇はない。
返信することもなくケータイをしまうと急ぐあまりに段差を踏み間違えて盛大に転んだ。アスリートとは思えないなと自嘲する。

「だっせぇ……」

鬼道クンの言う通りじゃないかと溜め息を吐くと電話が鳴った。誰だろうなんて思わない。

「なんだよ鬼道クン、鬱陶しいな」

「お前転んだか?」

「おい、何でそれ知ってんだよ!」

「ってことは転んだか。おーい不動転んだらしいぞ。じゃあ風丸と壁山は後で罰ゲームな」

「ひどいッスー」

「マジかよ!不動の馬鹿野郎」

皆の会話がダイレクトに聞こえてくる。全く、俺をなんだと思っているんだ。

「という訳でお前は俺の予想通りコケたのか。ははっ」

「何が"ははっ"だよ馬鹿にしやがって」

「悪い悪い。じゃあこれはみんなからの伝言だ、佐久間と幸せにな、じゃあ」

そこで電話は切れた。
みんなに祝福されているのも悪くはない。




綺麗に磨かれた窓ガラスにそっと手を触れて、外の景色を眺めていたら不意に涙が溢れた。せめて無事かどうかだけでも知りたい。こんなに弱虫で情けない自分の姿を見られるのも嫌だがそんなことよりなにより会いたかった。

「不動……会いたいよ……」

「ただいま」

そんなとき、突然ふわりと後ろから抱き締められた。慌てて振り向くとそこには――

「不動……」

「久し振りだな――ってお前泣いてんの?」

「馬鹿!泣いてなんか……」

否定することもできずボロボロと涙が頬を伝って落ちる。不動は優しく涙を拭き取ると頭をくしゃくしゃと撫でた。

「泣くな泣くな、ちゃんと帰って来たんだからよ」

「ん……」

子ども扱いは嫌いだが、今は悪い気はしない。
俺は思いきり不動に抱きつくと、苦しくて息が出来なくなるほど強く抱き締められた。

「ただいま」

「おかえり」







グリフォン観て萌えまくり、我慢できずに勢いに任せて書いてしまいました。短編は苦手だ。でもリハビリにはなったかな。
最後のただいまとおかえりを書きたかった。それだけ。









- ナノ -