魅久さんより
一周年フリリク企画でリクエストさせていただいたブレクロ文です。
WRGPも無事終了し、ネオ童実野シティには平穏が戻った。最終的には遊星が勝ち取った平和だが、その一端を自分も担っているのだと思うと妙な感慨が生まれる。自分達の救った街を再認識させるように散策していた時、不意に声を掛けられその足を止めた。
振り返った先に居たのは、気さくな笑顔を浮かべたブレイブ。意外な人物との再会に驚いたクロウは、来た道を少し戻った。
「ブレイブ! どうしたんだよ、まだ帰ってなかったのか?」
「出発は明日だ、だからその前に顔を出そうと思ってな」
想定外の再会に、握手を交わして喜びをあらわにする。正直に言えば、彼が帰国してしまう前に一目会えればと思っていたくらいだ。そんな密かな願いが叶えば、誰でも喜ぶはず。
今後のことを話そうかとも思ったのだが、はたと周りの異変に気付いた。あらかたの視線が向けられ、ざわめきが聞こえて来る。そこまで理解してようやく分かった、自分の立場を。
もう昔のように無茶の出来る状態ではない。WRGPで優勝したチームに所属している選手として、クロウは一躍有名になった。遊星やジャックには劣るが、自身も知名度が上がっている。そしてブレイブも立場は同じ、WRGPの出場者だ。準決勝で闘った二人が揃っているとなると、いやがおうにも目立ってしまう。
そういうことに不慣れなクロウは、ブレイブに移動を促した。突然の申し出に驚いていたが、状況を把握したのか彼は快諾してくれる。これで落ち着けると胸を撫で下ろしたが、その行為が水泡に帰すことをまだクロウは知らない。
‡ ‡ ‡
シティ郊外の喫茶店に、クロウ達は腰を落ち着けている。ここまでの道中、近道である大通りは使わなかった。人通りが多く、誰かの目に留まって身動きが取れなくなるのを防ぐためである。
静かに賑わうそこでは、二人を指差す者はいない。お喋りや勉学など、みな思い思いの行動に夢中だ。実際、クロウ達も周りなど気にせずデュエルのことや今後のことを話している。お互いに取り立てた変化は無いかも知れない、それが二人が至った答えだった。
「それにしてもあの試合は惜しかった……もう少しで、俺達が勝利を頂戴してたってのに…」
悔しそうな声を出しながらアイスコーヒーを含むブレイブに、クロウは少し誇らしげな顔をする。どんな窮地に立たされても、その逆境を覆す遊星。そんな彼とチームメイトであることが、とても嬉しいのだ。
喜びを噛み締めながら、サンドイッチを頬張る。
「ま、それだけ遊星のプレイングが良かったってことだな」
「おいおい、それじゃまるでハラルドがプレイングミスしたみたいじゃないか」
「そうは言ってねぇけど、負けちまうのは甘い部分があった――」
「あるわけないだろ。第一、ライフをあそこまで削られたってことは少なからず不動遊星にもプレイングミスはあったことになる」
「なんだと!?」
引っ掛かる言い回しに、クロウはムッとなる。あの時の遊星にミスは無かった、そう信じる彼にとってブレイブの言葉は許しがたいことなのだ。
そんな些細な会話から、プレイングに関する論議が始まった。カードの発動タイミングや召喚するモンスターのことだったり、あーでもないこーでもないと押し問答が繰り返される。
デュエリストの多いこの街では当然の光景。それゆえ周りの人間もさして気にしては居なかったのだが、どこをどう間違ったのか。
「ハラルドは潔いからな」
「それだけじゃデュエルには勝てねぇな、諦めないって気持ちがねえと。遊星はその気持ちを人一倍もってる」
なぜか、自身が思うチームリーダーの良いところを言い合っていた。しかもその話題は、次第に熱を増し二人の興奮を煽ってゆく。白熱する議論は声量を上げ、店内全域に広がっていった。
「ハラルドは優しいし気前も良いし、それに寛大だからなっ」
「それは遊星だって一緒だ。くわえてアイツは心が強い」
「はっ、冗談きついぜ! 心の強さならハラルドは誰にも負けない。なんたって元軍属だったからな」
軍属と聞いて、クロウは一瞬だけ言葉に詰まった。その瞬間をブレイブは見逃さず、勝ち誇ったようなしたり顔をする。
そんな表情をされれば、おそらくクロウでなくとも悔しい思いになるだろう。なんだか負けた気持ちになって、いま居る場所が店の中だと忘れ始めていた。
「知らねぇだろうけど、遊星のD・ホイールとデュエルディスクはアイツのお手製なんだっ。手先も器用だし機械には強いしな!」
「手先が器用なのはハラルドも同じだ! 不動遊星だけだと思うなよ!?」
「カードの知識もある!!」
「あったところで、技術が伴っていなければ何の意味も無いなぁ!」
「なっ…!? ブレイブてめぇ、遊星のプレイングセンスにケチつけんのか!?」
「お前だって似たようなことをしただろ!」
「なんだろうと、仲間を馬鹿にすんのは許せねぇ…!」
「奇遇だなぁ、俺も同じだ…」
見えない電撃が火花を散らす。普段の二人らしからぬ口論だが、周りにとっては無関係だ。はた迷惑窮まりない行為だった。
それぞれの手が、デッキホルダーに触れようと動いた。だがそれは、完遂される前に阻まれる。
「こんな時間までなにをしているんだ、ブレイブ」
「あっ……ハラルド…」
呆れた表情を浮かべたハラルドがそこに立っていた。店内が一瞬ざわつく。
予想外の登場にクロウが驚いていると、固まった手にそっと触れられる。
「このタイミングにデッキは必要無いはずだ」
「ゆ、遊星!?」
振り返った先は、少し怒ったような表情をしている。基本的に目立つことを好まず、普通の生活を送りたいと願っているのをクロウは知っていた。やってしまったという後悔にかられても、あとの祭りである。
聞けば二人とも、友人の帰りが遅いと探し回っていたらしい。だが始めから一緒だった訳ではなく各々が行動を起こした結果、合流することと相成ったのだ。
ブレイブもクロウも、それぞれのチームリーダーに連れられ店を後にする。
彼らの繰り広げた討論に、
答えが出ることは無かった。
Fin.
大人げないブレクロきたこれ!!二人のデュエルで両者キャプテン大好きなのがひしひしと伝わってきたのでプライベートでのキャプテン自慢が見たかったんですvvv
結局キャプテンに怒られる二人がわいい////
魅久さんありがとうございました!!
2011.9/28
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[mokuji]
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