どりすさんより







※作品にCP、にょた要素が含まれます。

閲覧後のクレーム、作者さまへの中傷など絶対にしないようお願いします。











「プラシド…?」

不意に握った手に、彼女は少し驚いたようにこちらを見る。
夜になり街のライトやネオンが美しく輝く中、プラシドはクロウの手を握りしめてその場に立ち止まった。






――インフィニティ―――





好きだ、愛しているなんて当たり前すぎてどう表現して良いのか分からない。
言葉という曖昧で、口から簡単に出てしまうようなもので済ませてしまえる程簡単なものでもない。

産まれてから今に至るまでここまで人を好きになった事はあっただろうか。心の底から幸せにしたいと思える相手に出会えた。
彼女の良いところを上げるとするとキリがないのだが、彼女の笑顔は人を幸せにする。とても柔らかで、暖かい。触れると壊してしまいそうな小さな身体も、年の割にしっかりしているところも、少々男勝りだが可愛らしいところも…何もかもが愛おしい。

愛を言葉にするのは簡単だが、この想いを言葉で全て表現するのはとても難しいものだ。本当に好きなら尚更―――――。




「プラシド、どうかしたのか?どこか具合でも…」
「クロウ」

ダイダロスブリッチには時間帯故か、誰もいない。波の音だけが静かに響く中、心配そうに声を上げるクロウの言葉をプラシドは遮った。




「受け取ってもらいたいものがある」
「受け取ってもらいたいもの?」
「そうだ。不要ならばここから海に捨ててくれて構わん」
「捨てるって…お前から貰ったものを…」
「…大きな意味がある。お前にとって重いものかもしれない……」
「プラ……!」

プラシドの真剣な顔にクロウも少し戸惑う。プラシドらしくもない、少し困ったような表情にクロウが声を上げようとするが、それは中途半端で言葉にならなかった。クロウがプラシドを見上げた瞬間に、その顎をとって口付けたから。

大きく目を見開いたクロウを無視して、プラシドはクロウの細い腰を寄せるように抱き、唇を吸う。困ったようにさ迷うクロウの手を片手で握りしめ、ゆるゆると舌で唇をなぞった。リップの香りだろうか、甘い香りが鼻をくすぐる。
遠慮がちに薄くあけられた唇から舌を滑らせて柔らかな咥内を味わう。ゆっくりと触れ合う舌も、重ねられた唇もプラシドの胸を熱くさせる。突き放されない事から確かな想いを感じて涙が出そうな位だった。






「…あれ、」

一瞬のようにも、永遠のようにも感じる短くて長い口付けから解放されたクロウは自分の指を見て小さく声を上げる。

左手の薬指に何時の間にはめられた指輪。
プラシドとのキスの前には無かった筈の存在にクロウは漸く、プラシドの受け取ってもらいたいものを理解する。



「え、え?これ…って…え??」
「…クンツァイトという名の宝石だそうだ。角度で色の濃さが違って見える」
「あ…ほんとだ…綺麗…」

ダイヤか、水晶か、真ん中のラベンダーの色味のあるピンク色をした宝石を囲むように小さな石が散らばっている。シルバーで美しくに装飾された指輪はクロウの指にぴったりだった。
角度によって色の濃さが変わるのが楽しいのか、クロウは角度を変えながらじっと観察している。



「凄い…ほんとに違って見え……ってこれ結構高いんじゃねぇの?!」
「…そうでもない」
「嘘、これ粒デカいし…こんな凄いのオレ貰えな…」
「なら捨てろ」
「ええっ?!」
「言っただろ、必要ないなら捨てろと。お前の為に買ったんだ。お前以外にやるつもりはない」

兄妹二人で苦労してきたクロウは高い物を貰うことに抵抗がある。プラシドの言う通り他の高価な宝石に比べれば安価なものであるが、一般人がホイホイ買えるような物でもないのも確かだ。
貰えないなら捨てろと言うプラシドにクロウはオロオロするしかない。



「だ、だってこんな…綺麗でいいものオレなんかに…」
「……クロウ」
「それにこんな…勘違いしちまうだろ…」

はめられた指輪を見つめながら泣きそうな顔をするクロウにプラシドは小さくため息をついた。



「…大きな意味がある。お前にとって重いものかもしれない…そう言っただろう。…まだ分からないのか?」
「っ…!?」

左手の薬指、唇への口付け、全てに意味がある。いくら鈍いクロウであってもここまで王道をせめれば流石に気付いたのだろう。泣きそうになりながらも顔はすでに真っ赤だ。



「その勘違いが勘違いであっては困る。そのままの意味だ、お前が嫌なら諦めざる負えないが……」
「ちゃんと…っ」
「は?」「ちゃんと言ってくんなきゃ…わかんねぇよ…っ馬鹿…!」
「クロウ…」
「ちゃんと口で言えって!お前の言葉がいい…プラシドの言葉じゃなきゃ嫌だ!」

ぎゅう、と抱きつかれてプラシドはめまいすら感じた。
体調が悪いわけではない。クロウの言葉が、表情が、彼女の全てが苦しい程胸を締め付ける。苦しくて、苦しくてたまらない。震えながらも縋りつくように抱きついてくる彼女の温もりを手放したくなどなくて、苦しさを紛らわせるように…強く、強く抱き返す。



「…クロウ」
「なんだよ…」
「お前と共に生きたい。共に起きて、共に寝て、共に歩みたい。イリアステルの名をお前にやる。……結婚してくれ」
「…っう…ぅ」
「…返事は?」
「分かってる…癖に…っ」
「お前の言葉がいい」


ボロボロと本格的に泣き出してしまったクロウの涙を唇ですくって、プラシドは囁くように答える。
少し意地悪だと思いながらも返事は言葉で貰いたかった。


「指輪、返せって言ったってもう返さないからな。……オレをもらってください」

涙を流しながらもとびきりの、大好きな笑顔で言われた返事にプラシドは甘いキスを返すのだった。



優しい色をしたクンツァイトの宝石言葉は



『無限の愛』




果てない、終わりのない、限りのない愛を



果てない想いを貴女に




end








*********


とあるやりとりから素敵すぎる新婚プラクロのプロポーズ文を頂いてしまいました…////というか、半分私がせびりました;;ありがとうございます〜!

ヘタレプラ様のせいいっぱいのプロポーズに、にやけと涙がが止まりません…!
この先待ち受ける受難の数々(プラシドのみ)を知っているだけにまた、涙が…(ノ_T)
何回読んでもハートがほっこりします。二人に幸あれ!


2011.4/16


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