▼キスの日A
「よぉなまえ。今日はなんの日か知ってるか?」
「キスの日でしょ」
「分かってんなら話が早ぇな。面貸せ」
「バッカじゃないの?!」
今度は広げていた文献の上に拳を降り下ろした。どすん、腕は痛んでもレポートは進まず、あっという間にスクリーンセーバーに変わるパソコンに深いため息をついた。
どいつもこいつも何考えてんだか。それ以上部屋に入るなと言いつけてから、立ち上がり際に蹴飛ばしてしまった椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。家が直ってようやくまともに学校も通えて、不足単位分をなんとかするためのレポートなのに。
邪魔しないでよ。そう呟いたら、すぐ側でラファエロの返事がして思わず振り返った。入らないでと言ったからてっきり退散したのかと思ったらなんでこんな近くにいるの!振り返った私のおでこに、感触がした。
「ここだけはいつか来る日まで勘弁してやるよ。残念か?」
「ラファエロもばかなの?!海に落ちて死んじゃえ!!」
「そんな簡単には死んでやれねぇな!」
ちょいちょいと唇をつつくラファエロに平手打ちをしようにもひょいとかわされ手のひらは空を切る。ぐぬぬと奥歯を噛み締める私の頭をぽんぽんと(馬鹿にするように)小突くと、いつもよりゴキゲンなのか鼻唄混じりに帰っていった。
150523