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ファータの世界というのは、完全な階級社会だ。
王様を筆頭に、見事なピラミッドが描かれる。


上の階級が下の階級をまとめあげるのは当然の仕事。
まあ、階級社会とはいっても、下の階級の者が虐げられるなんてことはないんだけれど。
ただ、階級によって役割が明白に分かれているだけ。


楽譜を司るフェッロ、解釈を司るラーメ。
数人のフェッロを、ラーメがまとめる。

そしてそのフェッロやラーメをまとめるのがアルジェント。
アルジェントの役割は世界に音楽を広めること。
人間でいう広報担当みたいな?
一人一人担当区域が決まっていて、その区域に音楽の祝福を与えるのが仕事だ。
フェッロやラーメより強い魔法を扱えるのも特徴の一つ。
難点を挙げるとするなら、担当区域から離れられないことかな。


そしてアルジェントより上の階級。
それが、僕たちオーロだ。
役割はアルジェントと同じだけど、僕たちは人の音色に宿る。
だから場合によっては、世界中に飛び回って音楽の祝福を与えることもある。
アルジェントより人数が少なくて、ファータと波長の合うごく少数の人にしか姿は見えない。
オーロは音色に宿るから、ずっと同じ人と共に過ごすかどうかも選べる。
アルジェントよりずっと行動範囲が広く僕たちに与えられた選択肢が多い、それがオーロだ。


彼女から離れようと思えば離れられる。
僕が見えなくなったということは、そういう選択肢があるということだから。
でも、僕はそれを選ばなかった。
彼女ならきっと、いつかは取り戻せると思ったから。
現に今、彼女は前を見て歩き出そうとしている。
彼女なら、再びあの音色を奏でることができるに違いない。
それを僕は何より願っている。
僕の、そしてたくさんの人が愛するあの音色を。








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