「おまえ、音楽は好きか?」
「…!!」
リリの問いかけにはっとした。
音楽は私にとって耐え難い過去を思い出させる要因だ。
それこそ、バイオリンに触れることが叶わない程に。
彼らが私から離れていってしまったように、音楽も私から離れていってしまったと思っていた。
けれど私は、音楽を嫌いにはなれなかった。
そうでなければ、音楽科の併設されたこの高校を選ばないだろう。
音楽が離れていったのではない。
私が音楽を避けていたのだ。
いつも音楽は私の前にあったのに。
「答え、出たようだな。」
見上げると優しく微笑むリリがいた。
「うん。私、やってみる。」
どこまでできるかわからないけど。
私は音楽が好きなんだ。
大好きなんだ。
今度は逃げたりしない。
離れたりしない。
心にそう誓って、私は握りしめた右手を高くかかげてみせた。
この決意がリリに、ファータ達に、もう会えない彼らに届くように。
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