05-7
「花梨と、えーっと…」
「俺?俺は土浦梁太郎。」
「あ、私日野香穂子。えっと、花梨と土浦君は知り合いなの?」
「そうだよ、去年同じクラスだったの。ね?」
「ああ。」
互いに自己紹介をしつつ音楽科棟へと入る。
「へぇ〜、こんな風になってるんだ!」
普通科棟とは随分雰囲気が違う。
校舎も違うし、制服も違う。
まるで他の学校に来たみたいだ。
物珍しさにキョロキョロしていたら、突如として頭を鷲掴みにされ引きずられた。
痛いです、土浦くん。
「2ーA…あった、ここだ。」
入り口に2ーAの表示がかかっている教室の前で立ち止まる。
「それにしても確実にういてるよね、私たち。」
「…だね。」
「気分悪いな、こう余所者扱いされると。」
教室の中には入りづらく、誰かに荷物を引き取ってもらおうと教室を見渡す。
確か2ーAだったと思うんだけど…
後ろでは香穂ちゃんと土浦くんがまだ話していた。
「とりあえず、制服が同じじゃなくて良かったぜ。」
「なんで?」
「あのヒラヒラしたスカーフみたいなタイ、あれは御免だね。ぜってー似合わねぇ。」
「絶対…ってこともないと思うけど。」
土浦くんの言葉に思わず笑いがこみあげる。
いや、きっと似合わない。
というか想像つかないんですけど、音楽科の制服着た土浦くんなんて。
笑っているのがバレると確実に再び頭を握られる。
そう思い必死に笑いをこらえているとふいに声がした。
「そこの二人、どいてくれないか。」
あ、この声は………!!
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