カシムの強引な愛


夜。カシムら霧の団は、誘拐されたアリババを助けるためホテルを襲撃した。


カシム「よっ、助けに来たぜ。待たせたな、相棒」

アリババ「カシム!」

カシムは、アラジンとモルジアナもそこにいる事を見つけた。

カシム「あ?お前ら夕べの」



ジャーファル「何が起こってるんです!?」

エナ「賊の中に見知った顔が見える!
まさか…カシム!?」



アリババ「ホテルを襲うなんて聞いてねーぞ!」

カシム「バカ野郎。やらなきゃこっちがやられちまうんだよ」

アリババ「やられる?」

カシム「情報が入ったんだ。このホテルにいるんだよ、あの男。シンドバッドが!」



ザイナル率いる部隊と対峙するシンドバッド達。

ザイナル「やっちまいな!」

そして、両者入り乱れる。

シンドバッド「俺が誰かわかった上で仕掛けてきたようだな」

ハッサン「ああ。分かってるよ、シンドバッドさんよお!」

シンドバッド「あっ?」

黄侵霧刀によって、シンドバッドの剣は黄色の霧となってしまう。

ジャーファル「ああ!もうこの役立たず!」

シンドバッド「うるせーえ!出てこいエナ!」

エナ「私はポ○モンじゃありませんよ」

ザイナル「エナ!?」

ジャーファル「エナ、任務中なのに彼らに刃を向けていいのですか?」

エナ「大丈夫、怪我はさせない、足止めするだけ。それに、彼らはとっても良い人なんだよ」

ジャーファル「この状況でその台詞…貴女大物になれますよ」

エナ「もう夢を掲げる歳じゃないよ」

シンドバッド「そうか?俺にはまだ夢があるぞ」

ザイナル「エナ、アンタまだ14じゃ?!」

エナ「ねジャーファル、歳バラした方がいいかな?」

ジャーファル「微妙な空気になるからやめなさい」



アリババとカシムを追いかけて霧の団が集まる屋上まで出てきたアラジンとモルジアナ。

モルジアナ「どうするのですアリババさん!彼らは所詮盗賊なのですよ!」

カシム「黙れ化け物女!またやられてーのか!」

その時、天井の壁を破ってシンドバッド達が現れた。

ジャーファル「エナ、カシムが居ますよ」

エナ「大変、人生最大級のミス」

ジャーファル「はぁ…」

シンドバッド「いや、最大級は宴の席でジャーファルを押し倒して”イかせてやろうか?”って言った事だろ」

エナ「きっと酔ってたんだろうね」

マスルール「あの時のエナさんカッコよかったっす」

ジャーファル「そんな事より!カシムに見つからないよう隠れなさい」

エナ「そんなのムダだよ、バラした方が早い」

ジャーファル「歳だけはやめときなさい」

マスルール「いや、まだ見つかってないっすよ」

カシム「怯むな!かかれ!」

シンドバッド「マスルール」

マスルール「了解」

怪力で次々と敵を倒していくマスルール。

カシム「何者だお前達!」

シンドバッド「何?俺を探しに来たんだろう?」

カシム「そうか…お前が!」

カシムの黒縛霧刀に、シンドバッドは締めつけられる。

シンドバッド「何だこれは?」

カシム「動けば動くほど締め上げるぜ」

モルジアナ「助けないと!」

ジャーファル「無用です」

エナ「怖っ」

シンドバッドは、自分のマゴイで黒縛霧刀を断ち切った。

ジャーファル「七海の覇王の名は、伊達じゃありません」

シンドバッド「この程度の魔法道具は、俺には効かないよ」

カシムを、後ろからマスルールが抑える。

シンドバッド「さて、あとは君を捕まえれば、俺らの仕事は終わりだ。なあ、エナ」

エナ「はい」

アリババ/カシム「エナ!?」

エナ「いるでしょ、アルコ、スパダ。出てきて」

アルコ/スパダ「はい」

カシム「エナっ、お前!」

エナ「頭領、そしてカシム様。裏切らせていただきます」

マスルール「エゲツないっすね」

ジャーファル「エナらしい思い切りの良さというか」

シンドバッド「らしいぞ怪傑アリババ君。エナとアルコは俺の配下だ。
そして大将同士、決着をつけようじゃないか。何なら出せば良い、攻略者なんだろ?」

カシム「アリババ、エナを連れて逃げろ!野郎共!俺たちの頭領を逃すんだ!」

エナ「私?」

ジャーファル「まだエナに執着しますか」

マスルール「1番執着してるのはジャーファルさんすよ」


シンドバッド「なるほど、それも1つの手だ。
どうせ霧の団はもう終わりだし、考えてみれば君はこいつらとは違う人間だものな。逃げたければ逃げるが良い。彼らはスラム街の人間だ。だが君は違う。
いくらそのフリをしようとしても
…君は所詮、王子様だ」

アリババ「黙れ!!知った風な口聞くんじゃねえ!俺とこいつらは、何ら変わりねえ、皆俺の大切な兄弟達だよ!
それを、その絆を馬鹿にすんじゃねええ!」

そうしてアリババは、金属器を発動させた。

エナ「マスルール、手を離して。カシムに話があるの」

マスルール「はい」



エナ「国が私を見捨てるなんてありえない!」

カシム「違う!お前はもう捨てられたんだよ!」

エナ「はっ!?」

カシム「疫病が落ち着いた後、スラムは焼き払われて、それを見て思ったよ。国は俺達をゴミ程度にしか思っていないんだって。
だから俺は、霧の団を組織したんだ。国に殺されちまう前に、自分達の力で戦って生き延びる為に!」

エナ「…」

カシム「なあ、エナもそうだろ?俺達と同類だろ?
記憶は無くなっちゃいるが、家族に捨てられ、国にも捨てられ…俺がこうして拾った。
行き場のないお前に、俺がもう一度居場所を与えてやる!」

エナ「お前…」



エナは、カシムの右手を両手で包み込んだ。

エナ「こうして貴方に救われた私だけど、シンドバッド様に再会することで記憶が蘇ったの。
貴方がこんな私に心を砕いてくれて嬉しかった。
記憶が戻らなければ、きっとカシムの傍に仕えていたよ」

カシム「仕えるって…俺はエナのことをそんな様に思っちゃいねえ!
お前にいて欲しかったのは、俺の隣だ!」

エナ「けれど…私の居る場所は、元からこの王の傍」

カシム「それが俺の告白を断る口実か」

エナ「いや、断るけど、今は、何というか別れの挨拶として…」

カシム「お前はそういう答えを出すか、エナ」

エナ「はい。……んっ!」

ジャーファル「エナっ!」


カシムはエナの無防備に開かれた口に自分のをあわせると、舌を絡め、彼女の暴れる頭を抑えた。
だが、エナの抵抗に敵わず、カシムは離された。

エナ「うっ…(今、こいつ毒を!?)」

カシム「ならば…俺の答えはコレだ」

エナ(カシムは笑っている。全く気付かなかった)

フラついて立っていられなくなったエナは、その場に膝をつき、血を吐いた。

エナ「かはっ!!」

マスルール「エナさん!?」

ジャーファル「エナ、しっかり!エナ!」

ジャーファルの必死に出した声はエナに届かず、彼女の意識は遠ざかっていった。

28.3.28
また最大級のミスをするエナさん

…脱線したけどちゃんと元に戻ります
この後ちゃんとシンドバッドが霧の団に入ります
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