カシムの想いと戯れ合う恋人

エナを担いだジャーファルは借り部屋に入ると、ベッドの上に優しくエナを座らせ、正面から抱きしめた。

エナ「ジャーファル?」

ジャーファル「一ヶ月ぶりに会ったのに、私が乱暴にすると思いますか?
あの霧の夜に見た時、本当はすぐにこうしたかったのですよ」

エナ「…好き」

ジャーファル「はい」

エナ「ねえ、聞いてほしい話があるの」

ジャーファル「なんでも聞きましょう」

エナ「カシムに恋愛的な好意を持たれてるかもって言ったけど…」



カシム「俺は、お前が好きなのかもしれない」

エナ「あはは、カシム様、冗談はよして下さいよ」

カシム「俺は本気だ」

エナ「きっと一時の勘違いですよ」

カシム「そんな事を言うな!こんな優しく俺の話を聞いてくれる女は、妹の他にお前が初めてだ!」



エナ「そう言われて。やっぱりカシムは、疫病で亡くした妹と私の姿を重ねて見ているのかもって思ったの。
まあ、そんな私的な事シンバに言わなくて良かったんだけど。ごめんね、ジャーファルの気を引きたくて言ったの」

ジャーファル「そんな事言わなくても、私はエナに気を惹かれてますよ」

エナ「ええ?照れるなあ」

ジャーファル「それと貴女、年齢詐称してるのですね」

エナ「うん。本当はカシムの6歳上だけど、14歳くらいだって言ってる」

ジャーファル「10歳も平気で嘘つきますか…そこまで来ると痛いですよ」

エナ「バレないから平気だよ」

ジャーファル「はぁ…」

エナ「ねえ、ジャーファル」

ジャーファル「はい?」

エナ「家族って、いいね」

ジャーファル「え?ああ、良いと思いますよ」

エナ「うん」

ジャーファル「自ら手放した私が言うような言葉ではないですがね」

エナ「私もそうだよ。
私は家族を知らない親不孝。
でも…親がいるのかも分からないよ」

ジャーファル「大丈夫ですよ」

エナ「?」

ジャーファル「こんな素敵な貴女を産んだ親なら、必ずいます。
例え一生の内に親に会えなくても、それ以上の愛情をシンや、私が貴女に注ぎますよ。
だって貴女に誰かを大切にする事や、愛する事を教えたのは、他でもない私達なんですから。最後まで離しませんよ」

エナ「ジャーファルううう」

ジャーファル「よしよし。でも、なぜ急に家族?」

エナ「それは。カシムに1ヶ月の間そばに置いてもらって、ああ、妹ってこんな感じなんだなぁって思ったの」

ジャーファル「ええ、そうですか?妹気分なら日頃から味ってる筈ですよ。
シンもヒナホホ殿もドラコーン殿もエナは妹のようだと」

エナ「シンバやヒナホホ殿、ドラコーン殿はパパだよ」

ジャーファル「ふふっ、そうきましたか」

エナ「ジャーファルはもちろん恋人!」

ジャーファル「そのポジションは誰にも譲れません」

エナ「ワガママだねー」

ジャーファル「エナの事に関してはワガママでいても良いんです」

エナ「ふふ、本当に私の事だけかな?
知ってるよ?前に夕飯のハンバーグおかわりしたこと!」

ジャーファル「あのハンバーグソースはエナが考えたものでしょう?だからですよ」

エナ「そっかあ」

ジャーファル「何ですかポカンとして」

エナ「私はジャーファルには勝てないなと思って」

ジャーファル「勝ってもらっちゃ困りますよ」

エナ「ジャーファルがいなくてもひと月生きていけますよーだ」

ジャーファル「あんなに多くの伝書鳩を私に寄越したくせに?」

エナ「うっ…」

ジャーファル「会いたい、寂しいしか紙に書いてない時もありましたね、あれも潜入捜査の内ですか?
しかも今夜はわざわざこんな所まで会いに来て、年下の男の子のハートを射止めました、なんてわざわざ、」

エナ「…ジャーファル」

ジャーファル「はい?」

エナ「キスして」

ジャーファル「は?」

エナ「おねがい」

ジャーファル「もう!やめて下さいよ!私がそれに弱いの知ってるでしょ!
今貴女をいじめてる途中なのに!」

エナ「んむっ、」

ジャーファル「はぁ、エナ」

エナ「ジャーファル、もっと」

ジャーファル「可愛すぎますよ」

28.3.26
余裕ありげに見えて余裕ないジャーファルさん
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