847年
「体術はエロかったんだな」
「は?どこが」
綺麗なティーカップとソーサーを手に持ち、とんでもなくゲスなことを言い出したリヴァイに、なんだかんだ彼と仲良しのハンジこと、私は率直に返事をした。
隣に座るナナバは、リヴァイと同じくレアダイスキ人間であり、そんなだーいじなレアが穢されることを嫌がっている。さっきから冷めた目線を送っているのもそのせいだ。
「てかレアがいないこと確認した?」
「レアに聞かれたらすり潰されるよ、リヴァイ」
「そうそう。ちょうどそこの木の実みたいに」
今日の午前中のことだ。
レアとリヴァイは訓練兵団の体術にゲスト講師に呼ばれたらしい。
そこで訓練兵を相手に手本を披露したレアをリヴァイは絶賛していた。ちょっとズレた意味で。
「レアの体術は悪くない」
「レアをそんな目で見るな」
「仕方ねぇだろ。お前らも見てみろ。マウントをとって腕をひねりあげるだとか、とにかく、奴の動きを全てだ」
なるほど。そんな頑張って観察してきたのか。
それを周りには一ミリも気付かれないように、きっとその場ではクールに腕を組んで澄ましてたんだろうな。リヴァイのそういう素直じゃないところがよく分からない。
「アイツが女らしいのは私服の時だけだと思っていたが、団服の時も凄まじい。はっきり言って眼福だ。世ではこれを至福の時と言うらしい」
「洒落は求めてないんだよ」
ナナバはレアが下品な目で見られているということに怒りをあらわにしている。長い脚をカタカタと小さく揺すって、ああ!ホントにイライラしてるのか!
「体術の時に揺れる、少ししかない肉と、汗が流れるうなじが神がかっていた。
レアが巨人だったらと思うと恐ろしいな。うなじを削げない」
「それは分かるけど」
「分かるんかい」
なんだかんだリヴァイとナナバって気が合うじゃん。ついこの前はレアの実験のことで喧嘩していたはずなのに。
というか、こっちとしてはもう十年以上付き合いがあるレアの話なんて飽きてるんだよね。とっくの何十年前に。
もう私はお邪魔しようかなあーと椅子から立ち上がるためにひいた椅子。それを両サイドからガッと掴まれ、向けられる鬼のような目2人分。
「ハンジ?どこ行くの?」
「いや、部屋に戻ろうかなーって」
「お前が戻る部屋なんてない。ハンジ。いいか、今からここがお前の部屋だ。
元は俺が使っていた部屋だが......いいだろう。交換だ。
お前の部屋はそれはじんましんが出るレベルに汚ぇが、場所がレアの部屋の隣という特権に免じて譲ってやる」
「それによく考えてみなよ、ハンジ。
普段あれだけ自分の好きな巨人の話に付き合わせるくせに、私たちの好きなレアの話には付き合わないって、そんなひどい事があるわけないよね?」
「..............」
「そうだハンジ。レアのファンクラブを潰すという案件が未解決だ。主犯は分かっている。今ここでじっくり対策を練ろうじゃねぇか」
「あのねハンジ。あの無愛想なレアに最近お近づきになろうとする男がいるんだ。特徴は低身長。もう誰か特定できただろ。
ちなみにリヴァイ、そのファンクラブのリーダーは私だ」
「ちょうど良かった。ナナバ。お前はいずれ潰そうと思っていたところだ」
「奇遇だねリヴァイ。私は今君を潰そうと思ってるところだよ」
「へえーそんなことがあったんだ」
机に頬杖をついて大あくびをしたのは書類タワーに埋もれる寸前のレアだった。
ちなみに今は休憩中らしく、珍しく部屋に通してもらえた。
「そうなんだよ!だから!分かってくれた?!てか聞いてた!?」
「はいはい。聞いてた聞いてた。
別にどこで誰に何言われようと、関係ないから。
でもねハンジ。
私はこれだけは許せない。
私の休憩時間(エルヴィンとのティータイム)を邪魔する奴。そう、お前。
エルヴィン、今日の夕飯はメガネのマッシュドミートですよー」
「潰されるうぅぅうううう!!!!」
30.8.15
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