汝の駒を愛せよ
「せっかくです しげ...将ちゃん。
庶民らしいことでもしませんか」
「大丈夫なのか朧。聞くところによりゃアイツ、年がら年中 人殺してるらしいじゃねェか」
「ええ。しかも政敵(おともだち)を。
ですが今日はさっぱり忘れてもらいます。透を将軍様のデート相手に選んだのは松平様ですから」
「なんでちょっとキレてんだ朧。
俺ァ アイツにも庶民的感覚があると思ったんだがな。ありゃねェよ。見ろ、」
「将ちゃん。そのボタンを押すとスロットが始まりますので、」
「ああ、こうすれば良いのだな」
「まさか、パチンコに連れてくるとは誰も思わねェだろ。
台の叩き方まで教えてるけど大丈夫なのアレ。オッサン心配だよ」
「娑婆に出ることの少ない透がパチンコという文化を知っているだけ優秀かと」
「朧。アイツが心配じゃねェのか?」
「いいえ。透はああ見えてまともです」
「どこら辺がだよ」
「_____思い出せば、小さい頃からアイツは」
「透。あの高い木に逆さ吊りになってる人達、何か悪いことでもしたの?」
「ああ。朧。アイツらは害だよ」
「どうして?」
「あの1番右なんかが特に悪いやつだ。私のバケツプリンを無断で食った。一言くれれば許してやっただろう」
「その隣は?」
「アイツは喧嘩を止めずにただ傍観していたやつだ」
「その隣」
「私のピーちゃんの葬式で居眠りをした」
「隣」
「なんか腹立つ顔だった」
「朧。アレが私に仇なした者の末路だ」「_____という過去が」
「待て どこら辺がまともなのか オジサンちょっと分からなかった。思いっきりドSな回想だった」
「ま、松平様。透がこちらを見ています!」
「ご覧下さい将ちゃん。
あそこに金属の音だけ異常に鋭く反応する奴がいるでしょう」
「またハズレかチクショー。次行くか?次こそツキが回って来る気がする。いや でもここで止めといた方が__でも次は勝利の女神が!!!」
「という葛藤の末
全財産をつぎ込み、妻子から疎まれ、帰る家もなくなり、お先真っ暗になった彼」
「大丈夫だ。
____俺には まだ透がいるだろ」
「相変わらず腐っているな銀時。こんな所で何をしている」
「ぱ、チンコ_____」
「将ちゃん。コレが計画性のない男の末路です」
「_______そ、そうなのか」
「銀時には良い家を用意してやる」
「おまっ、気が早いっていきなり同棲なんて!!」
「ああ同棲には持ってこいの墓場だ死ね」
「ばぶしっ!!!!」
「________」
「将ちゃんビビって何も言えなくなってるじゃねェか。どうしてくれんだ朧」
「そうですね松平様。いきなり来るのはステーキだけでよろしいかと。同じ天パでもあんなふざけた天パと同棲なんて以ての外」
「朧?」
「次の場所へ移動するようです。追いかけましょう」
「将ちゃん。ここは庶民の多くが足を運ぶ聖地、キャバクラです」
「松平様!またいらしてくださったのですね!」
「嬉しいわ!」
「透の野郎、ロクなとこ連れてかねーな」
「松平様。あなたが一番楽しそうだ」
「いいですか。一度しか言いませんからね。
女性を指名し、お酌してもらうのです。分かりますか。将ちゃ、」
「いやァ悪いねェ、こんなところまで連れて来てもらっちゃって。じゃ、俺はあの子に決」
「____お前関係ないだろ」
「いだだだだ!!!愛が重いって透ちゃん!」
「すまないな私の体重だ。
将ちゃん、なぜこのバカがここに?」
「さっきパチンコで死にそうになっていたのだ。
ここに来て回復したようで良かった」
「由々しき問題です将ちゃん」
「貧しさに苦しむ民を生んでしまった我々に責任がある。放ってはおけなかったのだ」
「いえ自分から貧しさにダイブしているような者ですから。助け舟などいらないのですよ」
「固いこと言うなよ透。
さ、同棲も決まったことだし俺の事はアナタ呼びでいいからなっ」
「アナタ〜冥土巡りの時間よ〜」
「ギャァァァァァァ!!!!」
「お客様、あ、危ない!!!」
ガシャァァァァン「透!!!」
「申し訳ありませんお客様!大丈夫ですか!?」
「あァ?今の音 何だ。どうした朧。朧?」
「あの、お連れ様なら向こうに行かれました。
他テーブルのお客様が...酒瓶を詰んだカートとぶつかったみたいで、」
「____アイツ、心配でいても立ってもいられねェってか」
「透ちゃん__大丈夫?」
「だ、」
「ダメよぉそんなとこ触っちゃ〜
銀時ったら えっち〜」
「_______だ、誰」
30.3.25
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