翳り | ナノ





守れなかった王様へ




「骸、本当に帰らないのか」

「帰らない。もう決めたから」



「君は一応 佐々木異三郎の件で殉職したという扱いにはなっているが、
生きていると分かれば奈落は君をただじゃおかないだろう」



「大丈夫。奈落は人の出入りが激しい。皆すぐに私のことなんて忘れる」


「君は奈落三羽に数えられたんだ、そう容易く忘れるか」


「知らない。そもそも透はルールなんて幾らでも変えられる。

もうあなたの時代だから。首領」


「______」


「皮肉ね。

自分の父を殺してその座を手に入れるなんて」


「虚様なら蘇ったよ。知ってるだろう」


「だけどそれはもう、父の皮を着た死神なのよ」



「____君には関係ない。



私が見てきた父は 昔から虚(あの人)に相違ない」





「_____そう」






「骸。

その決断が正しいのか、本当に分かっているんだろうな」

「分からない。

正しいことなんてもう何一つ分からないじゃない。



例外を突きつけられて、何も分からなくなった。

ただ、付いていくべきものは見えた。




奈落にいる理由がなくなったの。


奈落(あそこ)にいる者は 誰ひとりとして天照を信じちゃいない。



人を殺め、業火に自ら身を投げるだけ」






「私はあんな所にはもう、居たくない」








あの時
まるで心が見え透いていたみたいに、透は笑顔で私を送り出した。

その笑顔は松陽によく似ていた。







あの人と異三郎によって、今井信女は生まれた。






「骸」

「骸じゃなくて信女って言ってるでしょ」

「君、朧が今何をしているか知ってるのか」

「朧なら_____」















「結野アナのブラック星座占いでございます。


今日一番ツイてない方は 乙女座のあなたです。

今日は何をやっても上手く行きません。



特に乙女座であごひげをたくわえ 今歯を磨いているそこのあなた


今日 死にます」






「長官、死刑宣告です」










「江戸の警察庁長官(破壊神)のもとで働いてるわよ」


「_________どうしよう信女。心配だ」




30.3.19


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