カミナリ




「_____全部バレてんだよ。


お前が囮に来てもぜんっぜん面白くねぇ!
打つポーズだけ取っておいて、ボールは呼んでないって分かる!


遠慮とかすんな!!

全てのボールに、全てのチャンスに、本気で食らいついてけよ!!!!」




「_______っ!」

「陽・・・?」
「大丈夫か?」

「_____大丈夫っす。時間とってスミマセン。やります」
「お、おお、そうか」
「時間が勿体ない。やるぞ」

この重い空気とは反対に、軽快な笛の音が耳に入る。相手サーブ。
陽の真後ろ、西谷は少し前に出た。嫌な予感がした。信じてないわけじゃない、けどもしかしたら____。

風に乗って真ん中に飛ぶサーブ。空間が切り裂けて見える。けど、短い。前衛に落ちる。

「ネットイン!!」
「やば、陽ッッッ!」
「オーライ!!」
「陽ナイス!」

なんか____おかしい。陽の腕の面の向き。明らかに後ろ、俺に来るレシーブを___

「はっ!!?」
「なっ、後ろに回した!?」

こんなこと、ありえない。普通ならありえない。だけど_____



昔から変わらない。俺にトスを求める時は、必ず調子を戻したい時。悪い流れを払拭したい時。

「チームのセッターを信頼してない訳じゃない。
けど、なんて言うのかな。
何となく、夕のトスが1番手に馴染むって言うか・・・。

何枚ブロックがあったって、勝てる気しかしないんだ!」



地を這うように必死で上げたボールが繋がれて、陽に届く。コートに雷撃が走る。
アイツのスパイクが決まることが、自分のことのように嬉しかった。

だから。お前のそのチームへの妙な気遣いがお前の良さを殺してしまわないように___


上げてやるぜ。

お前の本領を100%引き出すトス__!!!



「オーライ!陽ッッ!

シーフォースッ、トドメの一閃!!!!」


長く苦楽を共にしてきたからこそ、分かる。これは俺にしかできねぇ。


「オーライ!!よおおしゃァァァァァァ!」


暗い曇り空。行く手を阻む豪雨。その中に一筋の光が射し込む。
決してキラキラした光ではない。荒くて、電気を纏った、まさにカミナリ。


「陽!!ナイス!!」

「夕・・・。ありがとな。










皆、すみません!!!





俺は安心してました!!
こんだけ強いチームメイトが居れば、皆に任せれば・・・勝てるって!!

背が高ければレギュラー入れるとか思って、バレーに受け身になってた!この身長をただの飾りにしてた!

自分のことも黒尾さんに指摘されるまで分かんねぇなんて・・・俺は馬鹿です!!


でも、もう1度チャンスをくれて!




ありがとう!!!!」



そう言って烏野側にバッと頭を下げた陽。

「いやいや、そんな、えーと、俺は」
「陽手抜いてたのかコルァ!!」
「しっかりしろよ!お前がいなきゃ勝てねぇんだからな!!」

「_____陽」
「ヒッ!」
「___はい。大地さん」



「お前がどれだけ点を稼いだって、手を抜くやつはいらない。

次プレーにブレが出たらレギュラーから下ろす。その覚悟でやれ」

「ハイ!!!」


陽さんは点入れたのに、大地さんは厳しい。
澤村と北来の背中を見て、影山はそう思った。
また田中も、そう思っていた。


「旭さん。大地さんって陽に厳しいっすね」
「俺のとはまた違う厳しさ?怖さ?って言うのかな。


でも大地のその一言で、陽は驚く程変わる」



暗い曇り空。行く手を阻む豪雨。その中に一筋の光が射し込む。
決してキラキラした光ではない。荒くて、電気を纏った、まさにカミナリ。


そんな雷の跡にも、道は開ける。
焦げ臭くて汚くても、後はただ、突き進むだけ。




29.8.28

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