24まだ夢の途中

「なんだレア。ローゼの奴らと心中するつもりか」

「作戦立案は私。エルヴィンが目を覚ますまでは」


リヴァイとレアがニック司祭と共に、エルヴィンやエレン、調査兵団の帰りを待っていたのは一週間前の話。


彼らが帰還する前にはハンジやモブリット、またレアの怪我は少しずつ回復へと向かっている。





奴らが帰還したあの日は酷かった。




「エルヴィン!!エルヴィン!!」

「落ち着け!レア!」




エレンを奪還することに成功した調査兵団だが、帰還した兵士達の表情にはどれも哀愁が漂っていた。

104期の新兵達はかなりの数生き残っているように見えるが、これで4人目の裏切りが発覚した上に、仲間内に王家の人間がいたとなれば頭も追いつかなくて当然だろう。憔悴しきった顔をしている。


「大丈夫だ。エルヴィンは直に目を覚ます」

「リヴァイ。そういってもう一週間ね」


数日間レアの腹には何も入っていない。空腹を通り過ぎた彼女の目は、しかしまっすぐと眠るエルヴィンを見ていた。


「全く。お手本のような忠犬だ」



















「心配かけたな、レア」


それからさらに一週間。
ようやくエルヴィンは目を覚ました。

レアはその間全く食べ物を口にしなかったのかというと、それは違う。一週間を過ぎたあたりで気を失って倒れたため、サシャが無理やり口に詰め込ませる係を任されていた。


「いえ、全くです。エルヴィンのお気になさるようなことは、何も」

「断食してたらしいじゃないか」

「太ったので体を絞ろうと思ったんです」
「嘘つけ」
「黙れリヴァイ」

レアが鋭く俺を睨んでくる。いや、そこ意地張るところかよ。
本当に健気な部下でエルヴィンも困ったものだろう。いや、こいつは逆にこういうの喜ぶタイプか。素直じゃないひねくれ者。




「それより、申し訳ありません。奪還作戦に参加できず」

「いいんだ。レアがいてもリヴァイがいても、この状況がどう好転したかも暗転したかも分からなかった。

エレンが奇跡を起こした。その話はもう聞いただろうが___」












「俺がまた攫われて、そのために調査兵団は熟練兵士の大半を失っちまった」


その頃、エレンはアルミンとジャン、ミカサと共にコニーを待っていた。この時間は彼らにとってはまだ夢の途中、束の間の休息であるというのに、エレンの心は全くもって休まらなかった。

「俺を、取り戻すために」

「でも帰りには損害がなかった。巨人が僕らを無視してライナー達に向かい続けて行ったからだ。

そのことで、ジャンと話してたことがあるんだけど.........

あの時、巨人達にそうさせたのは、エレンじゃないの?」

「あっ.........」

エレンは思い出していた。思い出すと言っても、あの時は無我夢中で殆ど記憶がない。ただ、巨人に拳で当たっていっただけだ。その1回のパンチで、俺たちを襲おうとしていた巨人は全てライナーの方へ標的を変えたのだ。

ジャンが横から口を挟む。

「もちろんただの推測だ。だがそうでも言わなきゃあの状況は説明できねぇ。
辛い立場だろうがな、エレン。死んだ人を生かすか殺すかは、お前次第なんじゃねぇのか?

その代償に見合う価値が、お前にはあるのか?」


















コンコンコン。ノックが軽く3回されて、俺はすぐにそれがハンジだと分かる。予め呼んでおいたのだ。

部屋にはエルヴィンとレア、俺の他にピクシス司令がいる。

「失礼するよ。エルヴィン。

.........いらしてたのですね。ピクシス司令。ちょうど良かったです。彼は」
「104期調査兵団 コニー・スプリンガーです」

「コニーはラガコ村の出身です」

「今回の巨人の発生源と言われとった村か」

「はい。実は村での調査結果を彼に確認してもらったところ、あの仮説の信憑性が増すばかりでして。その報告に」













「何じゃと?今回出現した巨人の正体がラガコ村の住人......」


「つまり、巨人の正体は......人間であると」

「まだ、確証はないけど」

エルヴィンは真実を突き止めるように言う。ハンジはそれが不確かなことであると付け足す。
俺の隣に座るレアの手は震えていた。


「じゃあ、何か?


俺は今まで、必死こいて____


人を殺して飛び回ってた......ってのか?」























その後、ハンジとコニー、ピクシス司令は退室し、部屋にはエルヴィンと俺、レアだけが残った。



「エルヴィン、あっ......」



エルヴィンを呼びかけて、俺は一瞬時が止まっているのかと思った。

何という事か、彼は少年のように目を煌めかせ口角をひしりと上げ、笑みを浮かべていたのだ。


「エルヴィン......?」


「お前、何を......笑ってやがる」

「はっ......」


レアへは何も言葉をかけられない代わりに肩に手を置いて、落ち着かせようとした。


「.........何でもないさ」




エルヴィンは口元を固く結び、一度リヴァイとレアの顔を見て、真剣な眼差しでこう伝えた。


「我々はまた一歩、真実に近づいたという訳だ」

「たった一歩か。
踏み台にした巨人と人間の数にしちゃ、割に合わないな」




「だが確実な一歩だ。我々はいずれ必ず突き破る。

真実を隠している........壁を....!!!」






30.8.2
アニメ2期分は終了です。



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