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 変態に恋されてしまいました4




※食べちゃうぞが冗談に聞こえません





「恋人放ってきちゃったけどよかったのかい?」

「…ええ、いいの。あんな男」

「そう?…全く彼も貴方みたいな素敵な人を怒らせるなんて…最低な奴だね」

「(…気持ち悪い)」


にっこりと優しい笑顔を
浮かべるターゲット。
作り笑顔で適当に相づちを打つ。

今、会場近くのホテルの一室で
ターゲットと二人きり、という状況だった。


「貴方はとても綺麗なのに…」

「そんなことないわ。」

「いいえ!冗談ではないですよ?今までのどんな人より素敵だ…」

「(あーはいはい、そうですか…)」


このターゲットの男は
人の女を寝取るのが好き、という
最低な性癖を持っているらしく

ヒソカと恋人のフリをして近づき、
目の前で喧嘩してみせたら
今だ!と言わんばかりに近寄ってきたのだ。


「(次から次へとよくもまぁ…ペラペラとお世辞が言えるものね…)」


さっさと終わらせてしまおう。
と思いながら太ももにつけている
ホルスターから銃を取り出す。

ソファーに座るターゲットの
隣に座りするり…と近寄った。


「どうしたんだい?」

「私もね、あの男には困ってるの。」

「そうなのかい?」

「しつこいし、強引だし、へんた…少し変わってるし、つきまとってくるし、もううんざりなの」

「そんな男は貴方には似合わないよ…!」

「…そうね。」

「だろう?…なら僕はどうかな?」


す…、と肩に手が回される。

今すぐにも払い落としたいが、
それをグッと我慢してそのまま身を任せる。


「ね…?僕なら貴方を満足させてあげるよ?」

「……」

「あんな男どうでもいいだろ?」

「…そうね、でも」

「ん?」


笑顔のままのターゲットの心臓に
かちり、と銃口を向ける。

びくっ、と身体が震えたと同時に
静かに引き金を引いた。


「意外と、嫌いじゃないのよね」


―「  」


びり、と銃が衝撃で震えた。

同時にがくり、と男の頭が垂れる。
死んだのを確認してから
肩に回ったままの手を払いのける。


「…終わり。さっさと帰ろう。」


ホルスターに銃を戻す。
この愛用の銃は特注の型で
撃った時に音がしないのが特徴だ。

火薬の匂いも残らず、弾丸も小さい。
血も吹き出しにくく暗殺にはもってこいで。


「(念能力は、とっておきだからね)」


もちろん念も使えるけれど
私の念は少し特殊だから
いざ、という時にしか使わないのだ。

あとはさっさと逃げるだけ、
と思いながら窓へと近づく。


―がくんっ! 「?!」


と、いきなり足の力が抜けて
崩れるように床へと倒れた。
受身もとれずにドサリ!と転がる。


「(?!…っなに、え、ちょっと待って、嘘)」


起き上がろうとしてみるが
足に手に、身体に力が入らない。
鉛のように重くて感覚が鈍い。


「(っ!なにか、された?いつ、さっき?最悪…っ!)」


倒れたままの姿勢で
目だけを動かして辺りを伺う。

と、ソファーの下に小さな
注射器のようなものが転がっていた。


「(…ああ、くそ…さっき、手を置かれたときね…刺された?何を?弛緩剤…麻痺…どっちにしても最悪だわ…)」


オーラは使うことができたので、
身体の筋肉を操作して無理やり起きる。

ゆっくりだけどなんとか
起き上がることに成功した。

でもまともに歩けないし動けない。


「(ああ…なるほど、この部屋の香りも…)」


刺された痛みを感じなかった。

唇をがりっ、と強く噛んでみるが
血は出ても痛みは感じなかった。

それはこの部屋に立ち込める香り、
最初はただのアロマか何かだと思ったが
たぶん痛覚を麻痺させる作用か
鈍くする作用があるのだろう。


「(あーもう…最悪…この男、そんなことまでしてたなんて…)」


下調べを怠っていたわけではないが
予想よりも手の込んだことをしてたらしい。

何か飲まされた、とは聞いていたから
部屋に用意されていたワインには
手をつけなかったのだが
まさかそういう時の為の薬があるとは…。


「(どうしよ…誰も来ないとは、思うけど…)」


人払いを頼んでいたようだから
当分は誰も来ないだろう。
だからと言ってのんびりはしてられない。

死体がソファーに転がったままだ。


「(あー、もう…めんどくさいことになった…)」


もう少しだけ無理やりに歩くが
少し動いただけなのに
相当の負荷が身体にかかっていて
ミシミシと筋肉が嫌な音を立てる。

諦めて近くにあったベッドに倒れこむ。


「ほんと…最悪…」


変態ピエロとペア組まされるわ、
恋人の振りをしなきゃいけないわ、
ヒソカにベタベタ触られるわ…。


「ばか…ヒソカの、ばか…」

「……バカは酷いなぁ◆」

「っ?!」


いきなり声がしてがばっ!
と起き上がりたいのにできなくて、
うまく動けず結局寝返りを
軽くうっただけになる。


「ヒソカ…!いつの間にっ」

「んー◆キミのオーラを感じてきてみたんだけど…動けないのかい?◆」

「っ…うる、さい」

「クックック◆」

「こっち来ないで変態、ばか、変態!」


ニヤニヤとしたまま上に乗られる。
ああ、もう、また、最悪。

動けないから抵抗もできなくて
満足気なヒソカを見上げながら
とりあえずギロリ、と殺気たっぷりに睨む。


「んん…◆キミの殺気はイイね、うん◆」

「うるさい、黙って、どいてよ変態」

「だってこの状況…襲わない方が可笑しいだろ?◆」

「死んで下さい」

「クックック◆」


私が抵抗できないのをいいことに
頬を優しく撫でられる。
くすぐったくて「んっ」と吐息が漏れた。

ヒソカの目がにんまりと細められる。


「…可愛い◆食べちゃいたいぐらいだよ◆」

「っうるさい、変態!」

「あ、ココ。赤くなってるよ◆」

「ひっ」

「…◆」


首元、たぶんさっき刺されたところ。

そこを指でなぞられて触られて
感覚は鈍くなっているのに
少し触られただけで
とてもくすぐったく感じる。


「媚薬…でも、盛られたかい?◆」

「…知らない…ただ身体が動かせないの」

「んー…◆」


ヒソカは少しだけ悩んだようにして、
それからこっちを見てニコ、と笑った。

それに少しだけ見惚れてしまう。


「先に報酬をもらうね?◆」

「…は?なに、なんのはな…っ」


―がぶっ 「っあ」


ヒソカが近づいてきた、
と思ったら肩を思い切り噛まれる。


「ひ…ヒソ、っん…カ!」

「…あんまり煽ると止まらなくなるよ?◆」

「…っ」


殴ろうと思っても力が入らない。

何か言いたくても口からは
吐息がもれそうになって、
慌てて唇を噛み締めて耐える。


「…っ、…っ…っ」

「…可愛い◆」

「う、るっ…さ」


痛みはなかった。

でも噛まれてる感覚とか
舐められている感覚だけは
伝わってきてぞわぞわとする。


「…ん◆ごちそうさま◆」

「…っは、…この…へん、たい…!」


ひとしきり舐めたり噛んだり
楽しんでからようやくヒソカが離れる。

恥ずかしいやら怒りやらで
涙ぐんでいて、それが恥ずかしくて

なんかもう死にたい。

ヒソカは満足そうに笑っていて
それがさらにむかつく。


「じゃ、さっさと帰ろうか◆」

「殺す…ヒソカ絶対殺す…」

「クックック◆」


ヒソカは動けない私をひょい、と
お姫様だっこするように抱き上げる。

抵抗したくてもできないわけで
ああ、もうなんか…どうにでもなれ。


「(助けてもらったから、文句は、言えない…けど)」


少しだけ、ほんの少し

ヒソカに食べられてもいいかも。

なんて考えてしまった自分がいて


「(…ありえない、)」


自己嫌悪。


「(ヒソカの、ばか…)」


責任転嫁。


「(あと、私も、ばか…)」





(変態に染められるまで)(あと少し…?)




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