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 変態に恋されてしまいました5




※大人しいとなんだか寂しいです(……気のせいでした!)





「それでね、勝手に部屋に入ってきたりね、あとね、目玉焼き半熟で美味しくて、なんかむかついて、髪の毛勝手に触ってきたりするのうざくて、でね、えっと…」

「………」

「もう!忘れちゃったじゃない!ちゃんと聞いてた?!」

「…まだあるの?」

「うん。」


グラスのワインをぐっと、
一気に飲み干す。

なんだっけ…
まだ愚痴あったはずなのに…
おつまみのチーズを食べながら
んー、と考える。


「…俺でストレス発散するのやめてくれないかな」

「えー」

「いや、えー、じゃなくて」

「だってヒソカの話しできるのイルミさんぐらいなんだもん」

「…いや、うん、まあそうだろうけどさあ…」

「あ、そう思い出した!勝手に人の携帯開いて、メアド勝手に登録された!しかもね、寝顔写メ撮られた!訴えたら勝てそうだよね!」

「いっそ殺しちゃえば?あ、依頼してくれたら俺やるし」

「いい…だったら自分で殺るもん…」

「あーはいはい(殺る気ない訳ね)」

「イルミさん、冷たい…」

「酔っぱらいの話し聞いてあげてるだけ優しいでしょ」

「酔っ払いじゃない!」

「…今何本ワイン開けたの」

「えっとねー1、2、3…7!あ、もうこれないや…おにーさんもう一本追加ね!」

「8本か…」


はあ、とため息をつきながら
イルミさんがワインを注いでくれる。

ちょっと嫌なことがあったから
イルミさんを呼び出して
一緒にお酒を飲んでいた。

めんどくさい、とか
なんとか言いながらもなんだかんだ
付き合ってくれる辺り優しい。


「この間も仕事で…うわ、思い出して腹たってきた…」

「何かされたの?」

「うん…」

「何?」

「い、ろいろ…」

「ふーん」


この間のことを思い出して
少しだけ顔が熱くなる。

ちらり、と伺うと
イルミさんもワインを飲んでいた。


「(…何、意識してんだろ、わたし…)」


そ、と首元を触った。

噛まれた痕はもう消えたけど
それでも未だに感覚が残ってて
なんかもやもや…。

あれからヒソカとは会ってない。

いつもなら仕事場に押しかけてきたり
家に侵入してくるのに最近は
めっきりそれも減っていて。


「(いいことじゃない…変態が居なくて…)」


それを静かで寂しいなんて
少しでも感じてしまっている自分が
どうしようもなく許せない。


「もー今日はそういうのを忘れる為に飲んでるの!イルミさんも黙って飲む!そんでわたしの話を聞くー!」

「俺、明日仕事朝早いんだけど」

「知らない!ほら!注いであげるから早くー!」

「あ、ちょっと、こぼれてるって」

「あ、チーズなくなった…おにーさん追加でチーズくださーい!」

「ああ、もう…酔っ払いめんどくさい…」


と、そのあともいろいろと
愚痴を話して飲んで話して
飲んで飲んで飲んで…

何本ワインを開けたか分からない。

ぼーっとする意識のまま
机につっぷしながら
グラスのワインをくるくると揺らす。


「生きてる…?」

「うー…何よぉー殺すわよ…」

「うん、元気だね。」

「ばかぁー…」

「はいはい。俺もう帰るからね」

「ダメ…まだ、足りないー…」

「仕事あるから」

「むー…ばかぁー」

「はいはい。お金は払っといてあげるから」

「…そんなんじゃ、誤魔化されない…わよ…」


と、ごねてみたものの
イルミさんはあっさりと帰ってしまって

「(冷たいんだから…)」

まあ、なんだかんだここまで
付き合ってくれたし
いい気分転換にはなったのだけど。


「もー!でもやっぱ、まだむかつく!」


お兄さんワイン追加ー!と
叫べば苦笑いのお兄さんが
チーズも一緒にワインを持ってきてくれた。

今日は飲み明かすんだから!




「え…うん…わかった◆」

『さっさとなんとかしろよ』

「…それができたらこんなに苦労してないよ◆」

『とばっちりくらうの俺なんだけど』

「ほんと…羨ましいよね◆殺したいぐらいだよ◆」

『はいはい。いいからさっさと迎えに行けよ』

「…わかってるよ◆」


イルミからの電話を切る。
もうすでにそのお店の前で、
入るのを少しだけためらっていた。


「(この間、ちょっと調子乗っちゃったからなぁ…◆)」


この間の暗殺の仕事、
パーティでのことをふと思い出す。

動けなくなってるのをいい事に
少し手を出してしまって
別に気にするほどでもないのに
なぜか顔を合わせずらくて


「(いや、ほんと…変に臆病になってるよなぁ…◆)」


他の女ならこんな風に
悩んだりしないのに
彼女のこととなると自分は
どうしても臆病になってしまう。

彼女が飲んでいる部屋へ案内されると
机の上にはたくさんの空の瓶。

部屋の中はワインの香りが充満していた。


「(んー…かなり飲んでるネ◆)」


机に突っ伏していて顔は見えない。

乱れた髪から覗く肌が
ほんのり赤みを帯びていて
それがなんだか色っぽい。


「(ああ…無防備だなぁ…◆)」


そこに噛み付きたい衝動を
堪えながらそっと近づく。

近づくとなにやらブツブツと
うわごとのようにつぶやいていて
気配を消したままなんとなく聞く。


「ほんと…なんなのよ…あの変態…」

「………」

「好きって言ってきたり、優しくしたり、変態のくせに…ずるいのよ…」

「………」

「ほんと、ばかぁー…」

「(…可愛い◆)」


涙ぐんでいるのか
声が少し上擦っている。

ぞくぞくと興奮しながら
そのあとが気になるので静かに待つ。


「どうせ、いろんな人に…同じこと言ってるくせに…」

「(キミだけだよ◆)」

「変態…見た目だけは、いいからって…調子乗って、むかつく…」

「(…酷い言われようだなぁ◆)」

「いろんなとこで遊んでるクセに…」

「(キミが相手してくれないからね…◆)」

「いきなり変な女に絡まれるし…わたしは、変態ピエロと、なんにも関係ないっての…」

「(…それは初耳◆)」


静かに聞いていれば
自分の愚痴をつぶやいていた。

お酒が回っているのか
こちらには気づいてないみたいで。


「あんな変態のどこがいいのよ…意味わかんない…」

「(…ちょっとショック◆)」

「うー…、何よ…何が「ヒソカに近寄らないでよブス!」よ…わたしが何したっていうのよ…」

「(………)」

「ブスって言われなくても…自分が一番わかってるわよ…」

「(そんなことないのに…◆)」

「…ヒソカと、釣り合ってないのよ、とか…知らないわよ…」

「(…どの女だろ…キミにそんなこと言った奴…今度会ったら殺そう…◆)」


泣いてるのがそのせいなのか
そうじゃないのかはわからないけど、
それでも彼女を傷つけたのなら
とても腹立たしい。


「わたしが、一番、わかってるわよ…ばかぁ…」

「(こんな弱ってるのは始めてみた、カモ◆)」


なんだか丸まった背中が小さくて
抱きしめたいけど拒絶されるのが怖い。

いつから自分はこんなに
臆病になったんだろうと苦笑いする。


「「ヒソカをたぶらかさないで!」とか…ほんと、うるさいし…意味わかんない…」

「(…誰だろう…この間の女かな?◆)」

「しつこいし、うるさいから…勢い余って、殺しちゃったじゃない…」

「(…そう、殺そう…って、え?◆)」


ぎょっ、として見ると
涙で少しだけ濡れた赤い瞳で
こちらを睨んでいた。


「どうしてくれるのよ、この変態…」

「…いつから、気づいてたの?◆」

「……教えない。ばか。死ね。変態」


暴言を吐きながら
ぷいっ、とそっぽを向いてしまう。

可愛いなぁ…◆と思いながらも
隣に座りながら優しく問いかける。


「ねぇ、殺したの?◆」

「…だって、うるさいから…何よ、何喜んでるのよ…!」

「クックック…◆いや、だって、ねぇ◆」

「誰のせいだと思ってるの?」

「ボクだろうね◆」

「…ばか、責任、取りなさいよね…」

「どうしたら責任取れるのかい?◆」

「……首、」

「ん?首?◆」


聞きなおすと顔を真っ赤にしてしまう。
なんだろう、と思いながら
言葉を待つときっ、と睨んでくる。


「(涙目で睨まれてもなぁ…◆)」

「首…噛まれたとこが、」

「ん…あぁ、痕になったかな?◆ゴメンね…?◆」

「違う!…そうじゃ、ない」

「じゃあ…どうしたんだい?◆」

「…変態が、感染った…のよ、ヒソカの…せい!」

「クックック…◆」

「何笑ってるのよ、ばか、うざい、きもい…」

「ゴメン◆…ねぇ、どうして欲しいんだい?◆」

「…言わなくても、わかるでしょ…ばか」

「クックック…君も充分変態だね◆」

「…うるさい、ヒソカの、せいよ…ばか」


真っ赤な顔で俯くキミ。

可愛くて、可愛くて、仕方がない。

そっ、と優しく抱きしめると
おずおずと手を回してきて
そのまま身体を預けてくる。


「噛まれたいのかい?◆」

「うるさい…ばか、変態」

「否定しないんだね◆」

「っ…いいから、黙って」

「クックック…◆可愛いなぁ…◆」

「その喉、噛みちぎってやろうかしら…」

「ああ、ソレ、いいね◆」

「この、変態…!」

「クックック◆食べちゃいたいぐらい可愛いよ…◆」

「食べられても、いい、わよ…」

「…っじゃあ、遠慮なく◆」

「残したら、許さないわよ…」

「クックック◆もちろん全部残さず…イタダキマス◆」




変態に恋されてしまいました。
(変態に恋してしまいました…?)




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