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 変態に恋されてしまいました3




※くっつかないでください移ります変態が




「いらっしゃいませ、招待状を拝見させて頂きますね」

「はい」

「有難うございます。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとう」


豪華なお屋敷でのパーティ。
金持ちやマフィアが集まって
商談やら会談やらをしている。

遊びに来た訳ではない。
もちろん暗殺の仕事だ。


「(はー…こういう場所は何度来ても苦手だわ…)」


それなりにおめかしをして
ドレスを着ているが
やっぱり動きにくいし
スカートはなんかスースーして
どうも落ち着かない。

太もものホルダーにある
銃の重さだけがいつも通りだ。


「シャンパンをどうぞ」

「どうも」


ウエイターからシャンパンを
受け取って一口だけ飲む。

ほんのり甘くてほ、と一息ついた。


「(んー…ターゲットは、ふむ、あれね)」


人ごみにまぎれながら辺りを伺う。
ターゲットの男は女性と楽しそうに
笑いながら何やら話している。

女遊びが激しく金使いも荒い。
いろんなところから
恨みも買っているらしい。


「(…あんな男のどこがいいのかしら?)」


確認しただけですぐ視線を外す。
シャンパンを飲み干してグラスを置いた。


「(今日は確か、誰かとペアを組まされてたんだったわね…)」


ターゲットの男の恋人。
実はその女性もターゲットで。

私だけでも二人殺るのは簡単なのに
依頼主はもう一人暗殺者を
雇ったらしいのだ。正直めんどくさい。

私は基本一人で動くことが好きだ。

団体行動は苦手、というか
どうしても男は「女は引っ込んでろ」
なんて口々に言ってくるもんだから
嫌になってしまうのだ。


「(ほんと…男は嫌いだわ)」


待ち合わせ場所である
二階フロアのバルコニーに出た。

ペア、というぐらいだから
もう一人は男なんだろう。
憂鬱だなー、と思いながら
バルコニーの柵に寄りかかる。


「お嬢さん、一人ですか?」

「……ごめんなさい、連れを待ってるの」


ぼーっとしているだけなのに
数分の間に何人かの男が話しかけてきた。

それの全部を丁寧に断りながら
待ち合わせの相手である暗殺者を待つ。


「(遅いわね…いつまで待たせるのよ…)」


と心の中で愚痴をこぼす。
少しだけイライラしてきた。

ただでさえ刺さる視線が痛くて。
物色するように眺められて
不快で仕方ない。気持ち悪い。


「お嬢さん、お時間はありますか?」

「…ごめんなさい」


またか、と思いながら笑顔を繕う。
心の中では盛大にため息をついた。

待ってる人がいるの、と

何度目になるかわからない言葉で
断ろうと思ったら―スッ、と
いきなり後ろから腰を引かれた。


「…っ?!」

「ごめんね、彼女はボクを待ってたんだ◆」

「…ちょ、」

「あ、そ…そうなんだ…お邪魔したね」

「うん◆邪魔だよ◆」


話しかけてきた男は
そそくさと部屋の中へと戻っていく。

私の腰を優しく抱いている男は
その後ろ姿を睨んでから
私の方を向いてにっこりと笑った。


「お待たせ◆」

「………悪夢だわ」

「遅くなってゴメンね?◆」

「なんで、よりによって、変態ピエロなのよ…」

「んー運命ってやつかな?◆」

「ああ…頭が、痛い…」

「大丈夫かい?◆」

「あんたのせいよ!ていうかいつまで触ってるつもり?離れなさいよ気持ち悪い!」

と、ヒールでぐりぐりと
ヒソカの足を踏みながら
腰に回ったヒソカの腕を叩く。


「んん…◆」

「喜んでんじゃないわよこのド変態」

「あぁ…イイネ◆」

「………」


気持ち悪い…。

黒のタキシードをぴしり、と着こなして
いつもはアップにしている髪も
今日はおろして綺麗にセットされている。

見た目は完璧なのに…
ほんと残念な変態。死ねばいいのに。


「一緒に仕事するのは始めてだよね?◆とっても嬉しいよ◆」

「それはどうも最悪ね。私一人で殺るから帰ってどうぞ?」

「つれないなぁ…◆」

「…別に、私一人でも大丈夫なのに」

「そうだろうね◆」

「……ヒソカは「女なんかに任せられるか」とか言わないのね」

「んー?◆」

「…別に。いつもこうやってペアを組む時は、大体そう言われるから」

「それはそいつらがキミの力量を測り間違えてるだけだよ◆」

「そうだとしても、気分悪いわ」

「格下の言うことなんて気にしなくいいのに◆キミって意外と素直なんだね◆」


可愛いなぁ…◆
なんて言うヒソカ。じろり、と睨む。
目が合うとにっこり笑われた。

「(…ドキドキなんかしてないしてないしてない…!いつもとちょっと雰囲気が違うだけなんだから…)


ほんと、黙って静かにしてれば
ただのイケメンなのに
喋ると残念な変態だからどうしようもない。


「まあ、キミ一人でも十分なんだろうけど、ボクがどうしてもってお願いしたんだ◆」

「最悪。なに余計なことしてんのよこの変態」

「だって携帯、連絡しても出てくれないんだもん◆」

「…ああ、壊れたのよ。」


正確には壊しただけど。

まあ、もし壊してなくても
ヒソカからの連絡なんて
取る気もないんだけどね。


「画像…消したでしょうね?」

「ん?◆ああ…どうだったかなぁ…◆」

「…ターゲットと一緒に殺してやろうかしら」

「それは楽しみだなぁ…◆」

「…ほんと…はあ、もうめんどくさいからいいや」


相手にするのもめんどくさい。
もう諦めて放っておくことにした。


「さっさと終わらせて、帰るわ」

「あ、じゃあこのあと一緒にご飯でもどう?◆」

「無理」

「残念…◆ま、今日一緒に居れるからよしとしておくよ◆」

「……っだから、触らないで!」


腰にするり、と回る腕。
優しく、でも力強く抱き寄せられる。

細いのにしっかりしていて
抵抗してみるものの
なかなか抜け出せない。


「うーん、イイねぇ…◆」

「っきもい、最悪、最低、ありえない…!」

「仕方ないだろ?今日は恋人っていう設定なんだから◆」

「…だからってこんなに近いのは、どうなのよ…!」

「だってこうでもしないとキミ、触らせてくれないから◆」


ニンマリと楽しそうに笑う。

むかつくむかつくむかつく!
ヒソカとの距離が近すぎて
香水の匂いとか、ヒソカの体温とか
まるで媚薬みたいにクラクラする。

「(…っ、ドキドキ、なんて、変態相手に、ドキドキなんて、してない、ないない、ありえないっ!)」


これは、仕事の一環。
演技することも、必要なの…!

と自分に言い聞かせる。

帰ったら一番にシャワーを浴びて
この甘ったるい香水の匂いを
落としてしまいたい…!


「今だけ、この一瞬だけ、数分だけ、だからね…もう二度はないからね…」

「はいはい◆」

「…すぐ終わらせる、一瞬で終わらせる、一秒で終わらせる…」


ヒソカのことを意識しないように
ぶつぶつとつぶやきながら
目だけでターゲットを探す。


「素直じゃないなぁ…◆」

「…なに?何か言った?」

「ん?◆なんでもないよ?◆」

「……あそ。」


じー、と睨みながら見るが
いつものニヤニヤとした笑みを
浮かべていて、すぐに目線をそらす。

ターゲットを見つけたので
それとなく近づきながら
そっとため息を吐いた。


「(…ほんと、見た目だけは、好みなのに…)」


こんなこと、思っていても
絶対にヒソカには言わないけれど。




「(…本当に素直じゃないなぁ…◆)」


腕の中で大人しくしているキミ。
きもい、とか変態、とか
時折罵りながらも身を任せていて。

それを可愛いなぁ◆と思いながら
口元の緩みが収まらない。


「(耳、真っ赤◆)」


自分では冷静を装ってるつもり、
なんだろうけどバレバレで。
強がってる姿が可愛らしい。


「(ああ…早く手に入れたいなぁ…◆)」


いま、腕の中にいるキミを

自分だけのモノにしたい。

ボクしか見えなくしてやりたい。


「(んーまあ、もうひと押し、かな…◆)」




(クックック…◆)(…やっぱ離れて触らないで変態が感染るこの病原菌)(…酷いなぁ◆)




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