※盗撮が犯罪って知ってますか?
「ん…んん…?」
「あ、オハヨウ◆」
「………」
「オフだから二度寝するのはイイと思うけど、ボクがいるのに無防備すぎないかい?◆」
「………最、悪」
目覚めた一番に見るものが
またもや変態ピエロの笑顔で
テンションががっくりと下がる。
「(あああ…不覚…)」
食べたあとソファーで
のんびりしてたら寝ちゃったなんて…
「ホント、ガマンするの大変だったよ◆」
「黙りなさい…」
今の状況は朝よりも最悪だった。
どうやら私はヒソカの肩に
寄りかかるようにして寝ていたらしい。
死にたい。
「ほんと、サラサラだね◆」
「誰が、触っていいって、言ったのよ…殺すわよ」
「触っていいかい?って聞いたら「うん」って言われたのに◆」
またも髪の毛をいじって遊ぶので
それを振り払いながら
起きたばかりのぼやーっとした頭で
精一杯の暴言を考える。
「死ね…きもい、うざい…変態ピエロ…バカ」
「相変わらずひどいね◆」
「…私がそんなこと、言うわけないじゃない…」
「ククク◆ボクはキミに呼ばれてここに座ったのに◆」
「は、ありえないでしょ…」
「急に名前を呼ばれて座らされて、いきなり寝だすから驚いたよ◆」
「…妄想、きもい、死ね」
「照れてるのかい?◆」
「………」
ここで怒ったとしても
逆にヒソカを喜ばせるだけなので
無視することにした。
寝癖のついてしまった髪を
手で乱暴にとかしながら
ソファーから立ち上がる。
時計を確認すれば
すでに15時を過ぎていた。
「居ていいのはお昼まで、って言ったわよね?」
「動けなかったから仕方ないだろ?◆」
「さっさと起こしなさいよ」
「死んだように寝てたからね◆」
「……徹夜明けなんだもの」
「ちゃんと睡眠は取らないとダメだよ◆」
「…大きなお世話よ」
なんで変態ピエロに
体調の心配までされなきゃいけないのよ…。
無駄に優しいところがむかつく。
変態のくせに。むかつく。
「ていうかさっさと帰りなさいよ」
「折角のオフだからね◆キミと一緒に居たくて◆」
「そういうのは風俗店でやっていただけます?」
「ボクは戦いとキミ以外は興味ないんだよね◆」
「気持ち悪いこと言わないで…嬉しくないから」
ぞわり、と鳥肌が立った。
ほんとなんでここまで
好かれてるのか…検討もつかない。
「ボクは本気なんだけどなぁ…◆」
「奇術師とか名乗ってる人に言われても説得力ないわよ」
「んーそうだね◆」
「ほんと…むかつく」
どうせ誰にでもそんなこと言って
甘い言葉を囁いてるんでしょ。
と考えたらなんかもやもやイライラ。
「(は…いやいや、アリエナイ…)」
慌ててその感情を取り消す。
誤魔化すようにソファーで
くつろいでいる変態ピエロの
足をげしげしと蹴った。
「ヒソカいつまで居るのよ早く帰りなさいよね」
「痛いよ◆…んーそうだなぁ◆」
「そうだなぁ…ってなに悩んでるの?拒否権はないから早く出て行って!」
「じゃあ今度デートしてくれるかい?◆」
「嫌よ」
「ククク◆ホント、冷たいなぁ…◆」
「もー!いいから早く!」
「わかったよ◆」
急かすように怒鳴れば
ようやく立ち上がって玄関へと向かう。
全く…休みの半分を変態ピエロと
一緒に過ごしたなんて…
「(はあ…本当最悪。)」
今日何度目とも分からないため息。
ため息をつくと幸せが逃げる。
なんてよく言われるけれど
このイライラを吐き出さないと
ストレスでどうにかなってしまう。
「あ、そうだ◆」
「……なによ」
ヒソカが振り返って戻ってくる。
顔にはいつもの笑顔。…きもい。
「次はいつオフなんだい?◆」
「……教えると思ってるの?」
「教えてくれないのかい?◆」
「……はあ。私はヒソカみたいに暇じゃないの。忙しいの。わかるかしら?」
「そっか◆」
「もう二度と来ないでよね」
「んーそれは無理かなぁ◆」
「死んでくれるかしら?」
「クックック…◆キミに会えなくなるからそれは嫌だよ◆」
「…きもいうざい変態ピエロ」
女が汚い言葉をあまり
使うものじゃないよ◆
なんて注意されて殴りたくなった。
ていうか殴った。
でも喜ぶもんだからタチが悪い。
「ククク◆まあ、あんまりしつこいと嫌われちゃうからね。今日はこの辺にしておくよ◆」
「もう手遅れだけどね」
「そんな冷たいところも好きだよ◆」
「嬉しくないからやめて」
「あ、そうだ◆」
「……もう!まだ何かあるの?!」
「寝顔、可愛いかったから保存しちゃった◆ゴメンね?◆」
「…………は?」
「じゃあ、またね◆」
―ガチャ…バタン、
最後のヒソカの言葉を理解する前に
重たい音を立てて閉まる扉。
残された部屋で呆然と立ち尽くす。
「…………はい?」
ちょっと待て待て待て
いま、なんて言った、あの変態?
「保存、って…は、え、意味がわかんない」
ぐるぐると考えていると
ピピピ…、と携帯の着信音が鳴る。
仕事の依頼かしら?
と思いながらディスプレイをみると
メールが一件届いていた。
知らないメールアドレスからだった。
「嫌な予感しか、しないんだけど…」
新着メールのアイコンを睨む。
はあ、とため息をついてから
そのメールを開いた。
『やあ◆メールアドレス教えてくれないから勝手に登録させてもらったよ◆今日は可愛い寝顔をゴチソウサマ◆』
「…っあの、変態ピエロ…!」
ぎりっ…と携帯を握る。
携帯勝手に見たわね…!
保存した、ってことは写メ…?
…ああああ、もう!むかつく!!
―バキッ!
嫌な音がしたかと思えば
携帯を握り潰していた。
いつの間にか念が発動していたらしい。
「もう、ほんと、最悪…っ!」
その怒りまま壊れた携帯を
ゴミ箱へと放り投げた。
「いつか、絶対に、殺す…あの変態ピエロ…っ!」
(次、仕事で会ったら、覚えておきなさいよね…)(ん?◆なんだろう寒気がするね◆クックック…◆)
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