くろあか | ナノ

 十八話 覚悟



この世界にきてからの半年間は
あっという間に過ぎていった。

修行ばかりの毎日。強くなった。
わたしだって、大切な人を守りたい。




いつもより早く起きた。まだ日が昇ったばかりで部屋の中は薄暗い。ぼーっとする頭でちら、と時計を確認すると5時だった。

予定では朝8時にホテルをでて夕方頃にはターゲットがいる目的のビルに到着する、という予定だ。

「…走りに行こうかな」

もう一眠りしようかと思ったけどそんな気分でもなかったので起き上がる。昨日は一日修行のおさらいをした。イルミさんは残念ながら下見、ということで出かけていたので一人黙々と『ささやく妖精』と堅の復習や、円、絶など徹底的にやった。

小さな声でも威力を出すことは
できるようになったので問題ない。


「動きやすい服…のがいいよね」


クローゼットを開けて
パーカーとショートパンツを出す。

下にタイツを履いてブーツを履く。
ぎゅっ、と紐をきつく締めて
一緒に自分の気持ちも引き締める。


「お、ゆあおはよう」

「おはようございます!」

「今日は早いな」

「寒くて目が覚めちゃって…」

「そうか。気をつけてな。」

「はーい」


マスターさんに見送られて
ホテルをあとにした。



走りながらいろいろと考える。


今日のターゲットのこと。

相手はレイドルファミリア
というそこそこ大きな規模のマフィア
を従える闇会社の社長、マルド。

貿易商と表にはうたっているが、
その実は奴隷売買や臓物売買。

殺しに盗み、誘拐や略奪…

金の為ならなんでもやる。


マフィアなんてみんなこんなもの。
と、イルミさんはそういっていた。

悪い人だから殺していい。

そんな風には思っていないけど
苛立ちは隠せなかった。



「…守るために、戦うんだ」


それだけは変わらない。

わたしがやらなくても
ヒソカさんだけで
なんとかしてしまうだろう。

でも、わたしだって役に立ちたい。

強くなったんだ。

もう弱いだけのわたしじゃない。


走りながらもう一度覚悟を決めた。

同じ景色なのにいつもの道が短く感じる。
いつも折り返すところでUターンして
ホテルへと戻った。



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