くろあか | ナノ

 十七話 イルミの思い



…気づいたんだ。
守られてばかりはいやだって。

今日思ったんだ。
殺してしまった分だけ生きようって。

決めたんだ。
わたしも守るって。


「…バカだねゆあは。」
「そうですね…」
「決めたんだね」
「誓いましたから」
「そう」

ふっ、とあれ、いま小さく笑った…?びっくりしてもう一度イルミさんの顔をみるがもういつもの無表情に戻っていた。

…気のせいかな?

そのあと、詳しい話を聞いて計画をイルミさんと立てた。修行で全身疲れきっていたのですぐにその日は寝た。計画の日までもう一日猶予がある。

明日体を休めて、ゆっくり考えよう。

「……わたしだって、守りたい」

自己満足かもしれない。ヒソカさんからしたら迷惑かもしれない。でも、それでも何もしないでいるのはできなかった。

「…大切な人を、守るんだ」

そう思いながら目をつぶった。思い出したのはなぜかお母さんの笑顔だった。




「…まいったな」

机の上のターゲットの資料を燃やしながらはあ。と何度目かわからないため息をついた。本当は修行に3日かかる予定だったからゆあの知らないうちにことを終わらせてしまおうと思っていた。

もし三日も俺もヒソカも帰らなければゆあは心配してマスターに聞く。ゆあのこととなる甘いマスターだ。口止めしてもこの仕事の話をするだろう。

知らないところでゆあが関与してきてややこしくなるのは、それだけは避けたかった。

「…俺も、甘い、かな」

人のことを心配する柄じゃないのに。ゆあはほんと変なやつだ。いつの間にか気にかけている自分がいてこの気持ちの正体がわからずずっと胸がもやもやしていた。

「…脅して、怯えさせれば逃げると思ったのに」

だからあえてひどいことを言った。人殺し、と強調した。突き放した。自分たちはゆあとはちがう。殺しに手を染め、汚い。汚れている。

汚れすらも気にしていない。自分のしていることが正しいか、間違っているかなんて興味もない。

「なのに…好き、ってなんだよ」

そんな感情を自分は知らない。いらないから。とうの昔に捨てた。それなのに、なんでこうも…苦しい?

人殺しである俺を、好き。なんてゆあはほんとに変だ。それがどういう意味だとしても…否定されなくて、怖がられなくて逃げられなくて、よかった。

…なんて、

少しでも思ってしまった自分がいて。

「……むかつく」

それでも思い浮かぶのはゆあのことだった。


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