「さて、がんばるぞー!」
変化の修行は部屋で行っていた。森に行くと集中できないし…部屋の中で座禅を組むとさっそく人差指から念を放つ。"0"の形を意識するがグニャグニャとして安定しない。コントロールがうまい。ってイルミさんに褒められたけど…
「ううう…」
人差指の念とにらめっこする。ゆらゆら揺れてた念がぐにゃ、と歪んだりブレたり…
「むむむ…」
何分かそうやってにらめっこしてたが一向に形にならない。…うう、難しい!はあ、とため息をつく。
「にゃーん」
どうやったらうまくかけるかなーと考えていたら可愛らしい声が聞こえてきた。パッ、と窓をみると黒猫が一匹ベランダにいた。
「くろー!またきたの?」
「にゃーん」
くろ、と勝手にわたしは呼んでいて。森に住んでいるのかたまにホテルにやってくる。マスターさんが餌をあげているようでなつっこくてとっても可愛い!
窓を開けて中に招き入れる。くろはその名前のまま。毛がとっても綺麗な黒色で瞳は透き通った金色。先が二つに割れたちょっと変わってるふさふさのしっぽが揺れて耳がたまにぴこぴこ動いて…
もう…もうっ!
「くろー!ぎゅっ、していい?」
「にゃー」
そう話しかけるとくろの方から腕の中へと飛び込んでくる。か、かわいいいいい!!
柔らかくてつやつやの毛を楽しみながらくろの頭を撫でる。ゴロゴロ喉を鳴らして目を細めるくろ。…癒される!
「修行なんかどうでもよくなっちゃうね」
「にゃー?」
「…いや、ちゃんとやるよ?」
「にゃー!」
「でも今はくろ優先なのー!」
くろは人間の言葉がわかるんじゃないかってくらいこっちの問いかけに対して答えてくる。…わたしも猫になったらくろの言葉がわかるのかなー?
「そしたらくろとお話できるのにねー」
「にゃー」
「…そういえばそんな技がマンガにあったな…」
くろを撫でながらふと思い出す。確か忍者のマンガで…変身の術?あれ、なんかちがうような…
「あ!思い出した!」
「にゃー?」
くろをソファーにおろして立ち上がって見よう見まねでモノマネする。
「えーっと…こんな感じで腕組んで…」
「にゃ?」
「呪文とかあったかなー?」
「にゃー」
「そう!えーと……"変化の術"!!」
なーんてね。と笑うつもりだったのにぼふん!なんて音がして思わずびっくりして目をつぶる。