くろあか | ナノ

 五話 お兄ちゃん



「はあ…疲れました」
「これでほんとに全部かな?」
「はい、大丈夫だと思います」
「そう◆」
「ありがとうございました」
「ん◆」

頭をよしよし、と撫でられる。
だから子供扱い…いやもういいや。

なにかいうのも抵抗するのもめんどくさくなってそのままされるがままになっている。

「お腹空いたからなんか食べてから帰ろう◆」
「そうですね!じゃあわたし買ってきます!」
「一人で大丈夫かい?◆」
「大丈夫です!」

ヒソカさんにお金をもらって立ち上がる。近くにハンバーガー屋さんがあったのでそこにしようかなーと考えながらフードコートに向かう。

だいぶ読めるようになった文字。お魚のバーガーとホットドッグ、ポテトのセットとドリンクも買って完璧!トレーを持ってヒソカさんのもとに帰るだけ!

というところだったのに、

「お嬢ちゃんひとり?」
「可愛いねー」
「俺らあっちで食べてんだけど一緒しない?」

はい…明らかにチンピラ
という感じの三人組につかまりました。

この人たちはトレーに乗った
二人分のバーガーを全部わたしが食べると
思っているんでしょうか…?はあ。

「あの…ツレがいるんです、すみません」
「いいじゃんそんなのほうっておきなよー」
「ほら、トレー持ってあげるからさ」
「大丈夫ですから…あの」

うまく行く手を阻まれて抜け出せない。
もう…めんどくさいなーどうしよう…

「ね?ほら行こーぜ?」
「…ちょっと◆」
「あ??」
「んだテメェ?」

ヒソカさん!救世主現るです!チンピラは現れたイケメンにガンを飛ばしている。

「はやく退いて◆」
「ああ?」
「殺すよ?◆」
「?!」

やばい?!ちょっとヒソカさん怒ってる?!う、しかもいやなオーラがヒソカさんから流れてる…!

チンピラ三人もその言葉に
ケンカを売られたと思ったのか
拳を握ってやる気満々だ。

ヒソカさんなら簡単にこんなチンピラ殺せちゃうと思う。念の修行を少ししただけだけど、そんな素人のわたしからみてもヒソカさんのオーラは異常なものだというのがわかる。

どうしよう…どうしたら穏便にすむ?!

ぐるぐる、いろいろ考えた結果。
いつの間にか叫んでいた。

「っ…お、お兄ちゃんやめて!!」
「!」

自分でもわけがわからないまま叫ぶ。あれいまわたしなんかとんでもないこと叫んだ!ヒソカさんの注意がチンピラからわたしに移る。

「ほ、ほほほら早くっ!ハンバーガー冷めちゃう!ごめんなさい失礼します!!」

その隙にチンピラの間を抜け出した。

「…」
「っはあああ…あんなとこで殺すとか!いきなり何を言い出すんですか!?」

ヒソカさんも追いかけてきたのでなんとかチンピラから離れることに成功した。あーよかったあ…ほんとに殺しちゃったりしたら警察に捕まって…あれ?警察とかあるのかな?

まあとりあえず穏便にすんでよかったー

荷物が置きっぱなしのテーブルに戻ってきた。
トレーをおいて椅子に腰掛ける。疲れたー。

喉が渇いたのでドリンクにストローをさして一息つく。んー炭酸ってシュワッとして癒される!

「ゆあ◆」
「…う、え」

ヒソカさんの声に顔をあげると
ニヤニヤが5倍増しぐらいになっていた。

「ね、もう一回言って◆」
「……え?なにをですか?」
「ん?お兄ちゃん、って◆」
「ぐっ…?!げほっげほっ…はい?!」

思いがけない言葉にむせる。

そういえばそんなこと叫んだ気がするっ!
いやでもあのときは必死だったし!

特に意味なんかなかったし!
だってさっき兄妹にまちがわれたしっ!!

「いっいいい言いませんよ!」
「えー◆」
「二度と言いません!!」
「お兄ちゃん、っていい響きだよね◆」
「…っ!」

顔が真っ赤になっている気がする。
熱い、ジュース飲んでも熱い。



「ゆあー◆」
「………」
「お兄ちゃん◆」
「………っ」

それから終始にやにやしっぱなしだったヒソカさんと目が合わせられませんでした。


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